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【たまごライター彩葉の挑戦】超どんでん返しをキメなさい。

      2015/04/24

たまごライター彩葉の挑戦

様々な”難しそうなこと”に、たまごライター彩葉(いろは)さんが失敗を覚悟で挑戦し続けるコーナーです。

今回の挑戦状は、こちら。

『超どんでん返しをキメなさい。にわとり』

彩葉の解答

あなたがいる世界

枯れた世界の果てで咲く一輪の花。
希望を抱いては失われる儚い命。

世に蔓延る悪と正義。

私は何のためにここにいる?
何のために、彼と対峙している?

『もう戦わなくていいんだよ』
そう言って手を差し伸べてくれた彼が冷たい目をして私を見つめている。背筋にぞくりと冷たいものが走った。
風が吹き、長い黒髪がなびく度に見える彼の左目は、麦畑を照らす夕日のような黄金色に変色していた。
じっと見つめていると、吸い込まれてしまいそうな気分になった 。

「どうして……どうしてラウルが……」
剣を持つ手が震える。戦わなくていい、そう言ってくれた彼の意には結局従えなかった。
思い出したくなかった血塗られた記憶が蘇る。人殺しの道具として使われてきた私は、彼……ラウルに出会って救われた。
ただ人の命を奪う枯れた世界ではなく、もっと豊かな生き方を教わった。
陽だまりに包み込まれるような束の間の幸せを、数年間送ってきた。

けれど、それも長くは続かない。
国を脅かす脅威はすぐそこまで迫っていて……結局私はまた戦闘の道具として駆り出されることになった。
次々と人々を惨殺するファントムという仮面の男。世に蔓延る悪の化身のような存在を、私は必死に探した。その男さえ見つければ、私はまたラウルと暮らせるから。
でも、その捜索の結末は残酷だった。

「ははは、もう薄々気が付いていたんじゃないの?」
その片手には白く不気味な仮面。よく見ると端に少し血が付着している。
いつも通りの口調に聞こえるけれど、言葉のところどころに影が差す。
手に持つのは彼の背丈ほどもありそうな大きな杖。確かに、彼は一般人にしては違和感があるほど、大きな魔力を持っていた。でも、まさか彼が人々を惨殺するような人間だなんて……思うはずがない。

「全く、知らなかった」
そうとしか、言いようがない。すると、ラウルは小さく微笑んだ。
この場にそぐわないような笑みだ。
「ははは、ティナはすっかり俺のことを信頼しきっていたもんね え。俺の話すきれいごとを全て本心だと思いこみ、ひたすらきれいな世界に浸って生きてきただろう?」

きれいな世界。血なまぐさい因縁とは程遠い、のどかな風景に囲まれた生活。
一緒にパンを食べたり、森に散歩に出かけたり、そこで薬草を摘んで近所の病気のおばあさんのお見舞いに行ったり。
小さな子どもたちと一緒に日が暮れるまで遊んだこともあった。市場に買い物に行ってラウルの美形に免じて安く売ってもらったり、夜はろうそくの灯りを照らして眠くなるまで話をしたり。
どうしても眠れない夜は、月を見ながらホットミルクを飲んだ。
辛いことを思いだして泣きそうになったときは、ずっと側にいて手を握っていてくれた。

そんな記憶が、私の幸せな世界の全てが、カラカラと音を立てて堕ちてゆく。

「何で?」
何度も口を開いたが、結局、聞けたのはそれだけだった。
「ティナには分からないだろうね。俺が見てきた地獄。俺の心の中で渦まくドロドロとした感情。言い表せない怒りと憎しみ。何かも滅茶苦茶にしたいという願望。殺意」
「殺意……?」
物騒な言葉が飛び出してきた。
血塗られた私ならばともかく、彼から聞くことになるとは思わなかった。

「この世界の理ってものには散々なんだ。幼い頃から、俺のような異端者は不必要だと散々罵られてきた。正義を気取った胸糞悪い連中は、今でも自分たちが物語の主人公だと思い込んでいる。周りにはたくさんの人がいて、恵まれて、堂々と自分たちの思想を語るんだ」
ラウルは自分だけでつらつらと言葉を並べていってしまう。
世界って何だろう。
幼い頃の記憶。そして、彼と過ごした記憶。そして……彼と対峙する今。

「ティナだってそう思っているんじゃないの?幼い頃から戦闘の道具として育てられてさ、理不尽だとは思わなかった?」
確かにそうだ。でも、ラウルと出会って幸せを感じることができた。
だから、もうそんな理不尽なことだって頭から抜けて、幸せな気持ちでこれからを過ごせると思っていた。
「まあ、俺はティナとは少し事情が違うんだけど。最終的にはこの世の正義だと主張してやまない偉い偉い連中を全て殺す。それまで俺のことは誰も止められないよ。例え、最狂の戦士と呼ばれたティナでもね」
「やめて!」
叫んでいた。彼には言われたくなかった。
剣を翳してひたすら人を殺していたころの私の異名。私はただ使役をされたいただけなのに、不名誉な名を付けられた。
でも、確かにあの時の私は狂っていたのかもしれない。人を殺したって、心が動かなくなっていたから。
彼も今その状態なのだろう。
自分の行いがいかに残酷か……多分分かっているつもりでも分かっていない。

「まあ、最狂の戦士と言われたのも俺と出会う前までの話だよね。君に目をつけておいて正解だった。君を平和ボケさせていたお蔭でその力を鈍らせることができたんだからね。俺を信じてくれて本当にありがとう」
皮肉交じりの言葉が吐かれる。
彼は……私の腕を鈍らせるために、私と過ごしていた? 全て策略の内だった?
絶望に侵食される。

「まあ、ティナと過ごした日々はそれなりに楽しかったよ。じゃあね」
少しだけ、彼の目が細められた。まるで何かを懐かしむかのように。しかし、すぐにそれは変わる。冷たい瞳で私に杖を向けた。腕に焼け切るような痛みが走った。
「う……」
これくらいで倒れたり悲鳴を上げる私ではない。
でも、今はショックが大きすぎて思わずくぐもったうめき声が漏れた。
剣を握らなきゃ。悪を倒さなければ。
彼を倒さない限り被害は減らない。彼は悪の化身ファントムだ。
言い聞かせても、身体は動かない。
直撃しそうな勢いの攻撃を間一髪で逃れる。もうやめたい。こんな現実、辛すぎる。

「はは、そんな目で見ないでよ。君にそんな目を向けられるのは初めてだ」
今不敵な笑みを浮かべる彼は、本当に私のことなどどうとも思っていないのだろうか。
私は彼の策略の一部に過ぎなかったのだろうか。
悔しい。悔しい……悔しい悔しい悔しい。
それ以上に……寂しい。
この想いは、私だけのものだったなんて。

私は剣を手放した。カラリと地面にぶつかる音がする。それは私の心が砕け散る音に似ていた。
戦えない。私は彼を傷つけることなんてできない。
私の弱味は完全に握られている。もう勝てない。

「もう諦めたの?もう少し頑張れると思ったんだけどなあ」
そう言いながら最後の一発を撃とうと杖を向けてくるラウル。
私は、彼に向かって真っすぐにに突き進んだ。
剣を捨てたことにより、油断していたのだろう。咄嗟に防御に出ることはできなかったラウルにしがみつく。

「好きだよ、ラウル」

この想いは、私の弱味。この気持ちの所為で、私は敵を倒すことができずに終わる。
でも、こんな残酷な世界で生きるぐらいなら、いっそ終わらせてもらった方がいいんだ。

勢い余って二人で倒れ込む。
この至近距離だ。怪我も負った。もう私に勝ち目はない。
目を固く瞑った。
「ティナ……」
次の瞬間私に降り注いだのは、彼の攻撃ではなく……唇に感じた淡い感触。
「無理だ」
擦れた声が聞こえた。
「え?」
「やっぱり最狂の戦士には敵わないよ」
カツンと静かな音がしたのは、おそらく彼が杖を手放したため。そのまま、強く抱きしめられた。 戸惑って目を開けると、彼は黄金色の瞳から涙を流していた。
「ラウ……」
口を開いた途端、また塞がれた。
「はは……悪の化身ファントムは最狂の戦士に殺されましたとさ。めでたしめでたし」
「そんな……きれいごとで済むと思っている?」
「思っていないよ」
「だろうね……仕方がない、私もラウルと一緒に罪を背負って生きていくから」

絶望からのどんでん返し。私は身体を起こし、彼の手を引いた。
帰ろう、あの幸せだった世界に。
少しだけ今の状況が間抜けな気がして、私たちは目を合わせて笑い合った。

彩葉のあとがき

いやあ、この企画って楽しいですね。
お題に合わせていろんな作風を身につけることができます から。まあ、前回のはイレギュラーすぎましたけど。
今回の話はいかにも前後がありそうな物語に見えますね! しかし実際にこれだけなのです! よろしければみなさんで前後を考えてみてください……
勧善懲悪なすっきりとした話も書きたいけれど、どうも悪側の心も考えてしまいそれができない。対立ものは好きだけれど双方の思考が絡み合うのは難しいです。
今後とも試行錯誤が必要なようだ。

登場人物の名前はある有名作品からとってはいますが、内容については全く関連性がないです。本当はもう少し近づけるつもりでいたのだけれど……

さて、次のお題はなんだろうな~
皆様からの挑戦状も随時募集しています(管理人さんが)( 多分)

たまごライター:彩葉
writer_iroha_100文字を書くことが生きがいの、未熟で未熟な小説家のたまご。新しいことにどんどん挑戦したい。依頼はいつでも受付中。現在は主に「pixiv」と「小説家になろう」にて小説を書いております。Twitter:@kotonoha_hutaba

挑戦状

次回の挑戦状は、こちら。

『主人公の性別を曖昧にしなさい(3000文字)

*彩葉さんもここで内容を初めて知ります

新しい挑戦状も、随時募集いたします。この企画の記事にコメントをいただくか、Twitterでハッシュタグ #たまごライター彩葉に挑戦状 をつけてツイートしてください。採用させていただいた場合は、お名前も併記いたします。

彩葉さんの解答が公開されるタイミングで、次回の挑戦状の内容を発表いたします。

また、彩葉さんの解答に対する感想や、あなたなりの解答があれば、お気軽にコメントいただければ幸いです。

 - たまごライター彩葉の挑戦 ,

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