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【たまごライター彩葉の挑戦】盛大にフラれなさい

      2017/03/29

たまごライター彩葉の挑戦

様々な”難しそうなこと”に、たまごライター彩葉(いろは)さんが失敗を覚悟で挑戦し続けるコーナーです。(過去の挑戦一覧

今回の挑戦状は、こちら。

『盛大にフラれなさい』

彩葉の解答

僕が最大の愛を伝える日。

自分で言うのもなんだが、僕は博愛主義者だ。

小道に咲いた花も、小鳥の囀りも、心地よい日差しも。
土にまみれた草も、蠢く蝶の幼虫も、街を濡らす雨も。
湿った日陰のアスファルトも、縦横無尽に駆け抜けてゆく電車も、ビルの谷間を吹き抜ける風も。
全てが大切で愛おしい。
幼子も老人も老若男女も変わりなく、僕の周りを彩る存在が愛おしい。
どれだって僕の幸福に包まれたこの生活には必要不可欠な存在で、一つだって欠けては いけない。

世界中に張り巡らされたデジタルなネットワークも、空を飛び交う監視カメラも、人々の合間を縫って仕事をする清掃ロボットも。
全て、全て愛おしい。

Tシャツの上からラフなパーカーを着込み、ジーンズのポケットに携帯とカードを突っ込んで家を出る。
皮の靴がアスファルトをコツンコツンと鳴らしてゆく。なんだか軽快な調子に鼻歌でも歌いたくなり、青空の元、僕は上機嫌で街を歩いた。
大通りの歩道の隣にあるゲートにカードをタッチすると、僕が設定した鈴の音風の効果音がリンっと響く。そのまま自動移動式歩道に足を踏み入れた。手すりに凭れかかったまま移動できる道路は便利なもので、僕はランニングをする日焼けした少年 を横目ににやりと笑った。勿論体力づくりにいそしむ彼だって愛おしい。愛おしいからこそこうやって見つめていると笑いがこみ上げてくるのだ。

道路を降りたところにあるコンビニで冷たいカフェラテを購入し、同じくレジでカードをタッチすると再びリンと心地よい音が響く。
今日もまたいつも通りだ。路肩の古びたアスファルトから顔を出す小さな花の隣には小型の監視カメラが咲く。僕が捨てたカフェラテの入っていたプラスチック容器は清掃ロボットが拾って片付けてくれる。
平和だ。大いに結構なことだ。僕は平和が愛おしい。
ただ……博愛主義者の僕は森羅万象全てのものを愛しているのだが、それでも『愛』の中にだって順位は存在する。
僕がもっとも愛す るもの。それは……

カードをタッチして黄色いゲートを開けると、白い線が規則正しく描かれた駐車場に足を踏み入れる。そわそわと携帯端末で時間を確認しながら僕は何度も空を見上げた。
どのくらい時間が経っただろうか。ピコンと着地を知らせる音がして、飛行自動車が駐車場の定位置へと降りてくる。それが完全に停止やいなや、僕は我慢しきれずに駆け寄った。
「舞さん!」
おはよう、と僕が言う前に舞は「おはようございます」と微笑みながら挨拶をした。
目線は僕より少し低いのに、大人びた印象がぬぐえない。
日本人らしい黒色の長い髪、それとは対照的に日本人離れした青色の瞳。柔和な微笑みを浮かべた口元。バランスの取れたほっそりとした身体。 白い肌。黒いワンピースの上からピンク色のカーディガンを着込み、丁寧にお辞儀をしている。完璧な容姿だ。
「お早いのですね」
「まあ、ね」
携帯のデジタル時計は集合時間の十五分前を表示している。彼女に会うのだからつい浮足立って早くきてしまうというものだ。
「じゃあ、行こうか」
「はい」
僕は彼女を先導した。少し落ち着かないのは勿論緊張の所為だ。

僕と舞は職場の同僚として出会った。彼女は非常に真面目な性格で、同僚の僕にさえ敬語を使ってくる。それでいて常に笑顔を振りまいてくれる明るい面もあり、僕は一瞬で彼女の虜になった。
問題は舞が職場に設置される人工知能を持つアンドロイドということだが、博愛主義の僕は問題がない。
どうした ら彼女と距離を近づけられるのか。どうしたらもっと彼女と話ができるのか、毎日必死に算段を立てていた。
そしてついに、僕はある口実を使って二人で出かける約束を取り付けることができたのだ。

「それにしても」
舞は少し俯きながら呟いた。
「こうして人に誕生日を祝ってもらう日がくるとは思いませんでした」
僕は今日が舞の誕生日……正確には製造日だと知ったときから計画を練り始めた。他の人間に約束を取り付けられていたらどうしようかと悩んだ末、一か月半も前から彼女にアプローチをかけていたのだ。
「いいよ、たまにはこういう日も必要だって」
「そうですね」
既に舞の好みは把握済みだ。予め調べておいた和風小物店へと案内する。
古風 で穏やかなBGMと木製の棚に陳列された小物は、僕が見ても十分に楽しい。こういうものが好きな舞にはなおさらだろう。
「これは……」
お手玉の前で立ち止まり、舞はそれを手に取る。すぐに店員が寄ってきて、舞にお手玉のやり方について見せているようだった。
店員が女性だからいいものの、男性だったら僕は嫉妬していたに違いない。そんなことを思いながら店を見渡していると、桃色の花が描かれた小さなかんざしを見つけた。これを舞の頭に付けたら似合うに違いない。
僕は購入を決意した。
今日のデートの終わりに、僕は舞に告白する。その時にこれを贈ろう。
舞が僕のことをどう思っているかは、今まで必死に考えてきた。
そして、好意的な印象を持っているのだ ろうと確信した。

僕は博愛主義で真面目で優しいという非常に優れた性格をしている。顔もいい方だと自負しているし、BMI指数はいつだって『普通』を指す。太っても、痩せてもいない理想的な体格だ。そしていつも清潔感を漂わせている。
茶色く染めて明るくなった髪をさっと撫でて整える。
そもそもこうしてデートの約束を承認してくれているということは、僕を好意的に思っている証拠だろう。

さらに何より彼女が僕に好印象を持つ決定的な理由がある。
僕は彼女を他の同僚同様に扱っている。
彼女は人工知能を搭載するアンドロイド。見た目は同じでも人間とは違う。それを意識して避けてしまう人もいる。けれど僕は違う。彼女をちゃん と人間同様の存在として扱っている。何度も繰り返すが、博愛主義の僕にとっては彼女だって十分な恋愛対象だ。
自分に優しくしてくれる男を、彼女は好きになってくれるに違いない。いや、既に好きになっているかもしれない。

「舞さん、言いたいことがあるんだ」
和風小物店のすぐ隣にあるカフェでカフェラテをすすりながら、僕は舞と対峙した。
「何でしょう」
彼女は可愛らしく小首を傾げる。それがプログラミングされたことだろうと関係ない。
「僕は博愛主義者だ」
「ええ……いつもそうおっしゃっていますね」
「僕は何だって愛することができる。空に掛かる虹の橋から路地裏に巣を張る蜘蛛まで僕の周りに存在する者全てが愛おしい。それは人間だって同 じ。そしてアンドロイドだって変わらない。こんな人間はなかなかいないよ」
肘をついて、彼女に顔を近づける。青色の瞳が僅かに揺らいだのが見えた。
「僕は、舞さん、君を愛している。僕は何だって愛するけれど、一番に愛しているのは君だ。僕は君がアンドロイドだからって全く気にしない。君を人間同様に愛することができる数少ない人間だ。こんな人間はなかなかいない。だから、僕と付き合おう」
そうして僕は彼女に買ったばかりのかんざしを差しだした。付き合いを始める記念のプレゼントだ。きっと彼女も気に入ってくれるに違いない。
舞は暫く口を閉ざしていたが、やがて顔をしかめた。
その表情は意外だった。表情を作るプログラミングが狂ってしまったのだろうか。
「舞さん、こういう時は笑うべきだよ」
気をきかせてそう言うと、舞は益々顔をしかめた。
「アンドロイドにだって、人を選ぶ権利があります」
そう言い捨てて席を立つ。
残された僕は呆然とした。プログラミングの不調だろうか。恋心をプログラムされていなかったとか……それなら僕が彼女に恋心を教えてあげなければならない。
僕はカフェラテを飲み干しながら次の作戦を考え始めた。

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彩葉のあとがき

盛大にフラれるのならば、いっそすがすがしくフラれていただかなければ。
そう考えて作られたこの主人公。思いの外打たれ強かったようです。
相手がアンドロイドということで、舞台は近未来。近未来ものってやはり背景を考えるのが楽しい ですよね。ただ、短編で世界観を伝えるのは難しい……さらに技術を磨きたいところです。

さてさて、次のお題はなにかな~Watch Full Movie Online Streaming Online and Download

たまごライター:彩葉 writer_iroha_100文字を書くことが生きがいの、未熟で未熟な小説家のたまご。新しいことにどんどん挑戦したい。依頼はいつでも受付中。現在は主に「pixiv」と「小説家になろう」にて小説を書いております。Twitter:@kotonoha_hutaba

挑戦状

次回の挑戦状は、こちら。

『1億円を使いきりなさい』(3000文字)
*彩葉さんもここで内容を初めて知ります

新しい挑戦状も、随時募集いたします。この企画の記事にコメントをいただくか、Twitterでハッシュタグ #たまごライター彩葉に挑戦状 をつけてツイートしてください。採用させていただいた場合は、お名前も併記いたします。

彩葉さんの解答が公開されるタイミングで、次回の挑戦状の内容を発表いたします。

読者が彩葉さんと同じテーマで挑戦するスピンオフ企画「たまごライター彩葉に挑戦」も合わせてお楽しみください。

また、彩葉さんの解答に対する感想や、あなたなりの解答があれば、お気軽にコメントいただければ幸いです。

 - たまごライター彩葉の挑戦

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