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【たまごライター彩葉に挑戦ピックアップ作品:最低5回はループさせなさい】不死の怪物ダフラムテイン/暗黒艦隊

   

【たまごライター彩葉に挑戦ピックアップ作品:最低5回はループさせなさい】

様々な難しそうなテーマで超短編小説に挑戦していただく、たまごライター彩葉に挑戦

たくさんの応募作品の中から、たまごライター彩葉(いろは)さんがピックアップした作品を、コメント付きで紹介いたします。最後には、グランプリ作品として「彩葉賞」も発表いたします。

今回の挑戦状はこちら。
最低5回はループさせなさい。にわとり

不死の怪物ダフラムテイン/暗黒艦隊

まだ返さないつもりかね?
それとも借りているという自覚をまた失ってしまったのか?
仕方あるまい。何度目になるかわからないが、改めて説明しよう。

まずはダフラムテインという名前を思い出すのだ。
ダフラムテインを一言で表すなら『不死の怪物』だ。およそ八十億年の昔から現在まで生き続けている、偉大で貴い、宇宙最強の生物だ。

ダフラムテインが生まれた世界は混沌としていた。
ぐねぐねした気持ち悪い物が生まれては消え、時に合体し分離し、そんな事を繰り返しているうちに、ある組み合わせが発生した。
その組み合わせは合体も分裂もしなかった。ただ周りにある全ての物を飲み込み続け、自分の体として従えたのだ。
そうして最強の生物は生まれた。
ダフラムテインはどのような毒も効かない。
ダフラムテインはマグマの熱でも、放射線でも死なない。
硬い爪に引き裂かれる事も、大きなアゴで噛み砕かれる事もない。
地下に埋まればモグラのように土を掘り返し、海があれば魚の様に泳ぐ。気が向けば翼を生やして空も飛ぶ。
どこまでも自由な存在。最強の生物だったのだ。

だが生まれてから十億年ほどが過ぎたある日、宇宙から大きな隕石が落ちてきた。
ダフラムテインにとって隕石とは空の高い所で光ったり、遠くの地面に落ちて爆発したりする物だったが、その時だけは違った。
隕石はダフラムテインに直撃した。隕石が持つ莫大な運動エネルギーを受け止める事ができずダフラムテインの体は爆裂四散した。

ダフラムテインは、死んだ。

いやいや、もちろん違う。ダフラムテインは『不死の怪物』なのだ。隕石ごときで死んだりはしない。
ダフラムテインは生きていた。ちょっと体がバラバラになっただけだ。
しかし行動の自由は失った。

ダフラムテインの脳細胞は思った。
このままでは、自分は干からびて死んでしまう。
いや、正確には死にはしない。活動が停止して眠りにつくだけだ。しかし、自分の力で醒める事のできない眠りとは、限りなく死に近い状態ではないか。
ダフラムテインの脳細胞は眠りを恐れた。
そして必死になって自分の体をかき集め、組み立てた。
破片探しの旅は惑星中を巡る事になったが、なんとか全てのパーツを回収する事ができた。
ダフラムテインは完全な生物に戻った。

最初は空を飛んでみようとした。背中に羽を生やし、羽ばたいた。
しかし何かが違う気がした。
飛ぶことはできたが、昔ほどの爽快感がなかった。
ダフラムテインは別の事をしてみようと考えた。

次に大地を駆け回ってみようと思い、四本の足を生やすと馬のように走り回った。
しかし何かが違う気がした。
走っても体力を消費するだけでおもしろくない。
ダフラムテインは別の事をしてみようと考えた。

とりあえず、おいしいものでも食べてみればいいと思い、大きな口を作って目に付いた物をかたっぱしから飲み込んだ。
しかし何かが違う気がした。
そもそも、おいしいという事がどういう事かよくわからくなっていた。
ダフラムテインは別の事をしてみようと考えた。

何もかもが面倒になってきたので、日のあたる所に寝そべって体を温めてみた。
しかし何かが違う気がした。
本来やるべき事を放り出して時間を無為に過ごしているようにしか思えなかったのだ。
ダフラムテインは別の事をしてみようと考えた。

もしかしたら、体のパーツが足りなかったのかもしれないと思って、海の底に潜って動いているものを片っ端から捕まえてみた。
しかし何かが違う気がした。
それらはあくまで餌であり、自分の体ではない。
ダフラムテインは別の事をしてみようと考えた。

そんな事を繰り返しているうちにダフラムテインは疲れてしまった。
自分の中に足りない物。それはもう、この星のどこにもないのだと、そう思った。
ダフラムテインが自由を失った瞬間でもあった。
諦めたダフラムテインは長い眠りにつくことにした。目が覚める時には、失ってしまった物が戻ってくるだろうと信じて。
これがおよそ、七十億年前の話だ。

まだ返さないつもりかね?

ダフラムテインが失った物は、確かににその星の上にはなかった。
なぜなら……、隕石が落ちた時、それは大きな爆発を起こしたのだ。あまりに大きな爆発だったので、破片の一部は星の外まで飛んで行った。その破片が、ダフラムテインの体の一番大事な物を持ち去ってしまったのだ。

まだ返さないつもりかね?

ダフラムテインの欠片は何億年も宇宙を旅して、ついに一つの惑星に落ちた。
その星には有機物はあったが生命は生まれていなかった。ダフラムテインの欠片は本体に戻りたかった。しかし今の状態ではそれが難しいと考えた。
そこで周囲の有機物を利用して自分の劣化コピーを増やしながら、なんとかして本体に戻る方法を探そうとした。
最初の数億年は海底火山の近くで硫化水素を吸いながら作戦を練った。やがて恒星の光を利用する事を思いついた。光合成だ。
植物プランクトンを生み出し、それを星の全てに行き渡らせて大気の成分を変更した。同時にマグマの中にも分身を潜らせて流れを作り、地磁気のバリアで惑星を包んだ。
次に活動的な動物プランクトンを生み出し、植物プランクトンをわざと食わせた。
複数の動物プランクトンを連結させて多細胞生物を生み出した。

……そんな気の遠くなるような繰り返しの果てに、道具を組み立てて重力圏を脱出できる生き物にまで進化させたのだ。

まだ返さないつもりかね?

そうだよ。これは君達人類の話だ。どうして自分達がそこまで進化できたか、これでわかっただろう?
まずはダフラムテインに感謝を捧げなさい。
そして一刻も早く、恒星間飛行の用意を始めるのだ。借りた物を返しに行くのだ。

ん? ダフラムテインがどこにいるかわからない?
それは、なんとかして探し出すのだ。無理なら思いつく限り全ての方向に飛び出せばいい。下手な鉄砲なんとやらと言うだろう。

まだ返さないつもりかね?
それとも、恒星間飛行をするには、もっと進化させてやらないとダメかね?
あるいは君達がどうしても無理だと言うなら、一度リセットして最初からやり直すが、その方がいいかね?

すでに七十億年も待った。あと十億年ぐらいなら同じような物だとダフラムテインは言っているが……恒星間飛行にかかる時間も考えるなら、あまりモタモタしない方がいいのではないかね?

わかったなら、急ぎたまえ。

作者プロフィール

暗黒艦隊
受賞暦、特になし
小説家になろうで活動中

作者あとがき

気がついたら、なぜかコズミックホラーになっていました。
書き上げて読み返した時の正直な感想は「五回って、多くね?」でした。実際、多い。読む方も同じ文章を何度も読まされる事になりますから。たぶん三回ぐらいで十分でしょう。

それにしても、あれですね。
SFが売れない売れないって偉い人がみんな言ってるらしいけど、こんな小説ばっかり書いてるから売れないんだろうな、と自己反省に浸っています。

たまごライター彩葉のコメント

読んでいて心が躍る素敵なSF小説でした。謎の生物ダフラムテインが段階を経て自分の姿を取り戻してゆくお話かと思いきや、待っていたのは意外な結末。そう来るか! と画面の前でおもわずにやにや。
宇宙から来た微生物が進化を遂げ、やがて道具を使って再び宇宙に出向く。その発想と表現も素敵でした。ループが物語の主軸から外れてしまっているように見えるのが少し残念です。

 - たまごライター彩葉に挑戦 , ,

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Comment

  1. 小杉 より:

    拝読しました。
    ここって感想書いていいんでしたっけ・・・・・・。

    ★ 一番に思った事は、「どこが5回ループになってるんだろう」ということです。
    『ダフラムテインは別の事をしてみようと考えた。』ってところでしょうか?
    ちょっとループには見えなかったです。ダフが試行錯誤してるだけで。
    ループの定義はよくわかりませんが、少なくとも時間的に巡ってないとループ(繰り返し)にならないんじゃないかな。
    (何回も人生をやり直すとか、再生→死亡→再生をしてるとか)

    ダフラムテインが何回も死んでるのならわからないでもないですが、そうとも読めない。
    『そんな気の遠くなるような繰り返しの果て』 は、別に何か同じことを繰り返してるふうでもなく。まあ進化は繰り返してるかもしれませんが。
    少なくともお題がなければ、初見で「ループもの」とは思えないですね。

    ★ SFはよくわからないので、感想はキビしいですが。
    「結局借りたものってなんだったの」?、とは思います。わからんのに返せとか言われても。それは「ダフラムテインの体の一番大事な物」につながってるのですが、いや結局それが何だったのか。これがこのお話の核だと思うのですが、ちょっと思いつきませんでした。書かないのが美徳というのもありますが、ここまで引っ張って引っ張って話の中心にしておいて結局言わない、というのはどうかなと。それは「心」や!とかでもいいんですけど。

    失礼しました。

コメントはお気軽に^^

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