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【たまごライター彩葉に挑戦ピックアップ作品:超どんでん返しをキメなさい】ゴーストライター/ツバサ

      2015/06/04

【たまごライター彩葉に挑戦ピックアップ作品:超どんでん返しをキメなさい】ゴーストライター/ツバサ

様々な難しそうなテーマで超短編小説に挑戦していただく、たまごライター彩葉に挑戦

たくさんの応募作品の中から、たまごライター彩葉(いろは)さんがピックアップした作品を、コメント付きで紹介いたします。最後には、グランプリ作品として「彩葉賞」も発表いたします。

今回の挑戦状はこちら。
超どんでん返しをキメなさい。にわとり

ゴーストライター/ツバサ

暗い部屋にはブルーライトの灯りだけが灯りタイピングする音が響く。カーテンも閉じられ息が苦しくなるような密室。奈緒はそこで熱心に打ち込む。
恋愛系、悲劇系、ミステリにSF。なにを書かせても一流だと言われる小説家『木桜キサ』。小説のドラマ化映画化は数えるにはすでに両手の指を必要な数ほどになっていた。
だが、本当に木桜キサこと、貴崎さくらが描いた作品はその何分の一か。ほとんど奈緒による代筆だ。
奈緒の弱みに付け込んださくらと編集者が無理やり彼女に書かせている。その真実を人々は知らない。
次はどのような作品を作ろうかと奈緒は思い巡らせる。
事実は小説より奇なりという言葉がある。ならば、事実を基にした小説を描けばさらに奇になる。
奈緒の、木桜キサの次作の作品はこのようにして思いついた。
奈緒にとった一番の奇は間違いない。今の生活だ。
プロットを書き上げる速さはすざましかった。
かつて、多くの人ににうける作品を作った井原という女と人を選ぶ作品を作った佳子という女。
売れたのはもちろん前者。しかし、飽きられるのも早かった。奇となる部分の少なさに人々はマンネリを感じさせ始められた。
最初は利害の一致からだった。どうしても、自分の本が売られていく様子を見たい佳子と今の人気、地位を失いたく無い井原。
井原のブランドを借り出した作品は新たなタッチとして人々に反響を呼んだ。それに調子にのり井原は佳子に小説を作り続けることを強要し続ける。
自分のおかげであなたの作品は売れている。
自分がいなければあなたの作品が世に出ることもなかった。
感謝されることはあっても恨まれることはない。
佳子のストレスは溜まりに溜まる。しかし、自分の作品がこうして形となる嬉しさもある。ジレンマの中ドンドン佳子は壊れていく。
手首に増えるカッターの切り傷。乱用される精神安定剤に睡眠薬。異常なカフェインの摂取。
佳子の身も心も壊れるのにそう時間がかかることはなかった。
そうして、佳子は―――佳子は……。
ここでタイピングが止まる。佳子はどうなる?それの答えを奈緒は知らなかた。当たり前だ。この事実の終わりを奈緒はまだ知らないのだから。
そもそもこの物語はハッピーエンドなのかバッドエンドなのか。ハッピーエンドにはどう導けばいいのか。
井原の作品のほとんどが佳子が作ったと公表すべきか。それでは佳子もバッシングを受ける。バッドではないにしてもハッピーエンドではない。しこりも残る。
では、井原を見捨て佳子が一人で本を書き続け出すことにするか。いや、やはり井原というブランドがなければ売れにくい。
それでは今まで通り書き続けるか。それが一番のバッドエンドだろう。
どうエンドを描いてもバッドエンドにしかならない。そこで気づくのはたった一つの事実。ああ、そうか。この物語にはバッドエンドしかないのだと。ならばバッドエンドを描けばいい。
奈緒は方向を決めて描き始める。ありのまま思ったことを打つ。物語は生々しくリアルを描くように、ノンフィクションであるかのように描写されていく。
「井原はこれで終わり」
奈緒は呟く。願いをのせるように。
 
 
 
 
「先生、これ」
広い仕事部屋で頭を抱えていた女、さくらの元に編集が表れる。手には大量の原稿用紙。
「なに?」
「これ、読んでください」
「……これ」
「はいこの文体にメールアドレス、最後のサイン。間違いなく」
凍りつくさくら。
「あの子はもう……!」
「仕事場で首を吊って亡くなって三ヶ月。だけどこの作品の書き始めはその三ヶ月前。あり得ません」
「それに、この作品」
「はい、間違いなく恨んでいるでしょうね。幽霊になってまでも私達にこんな作品を送るなんて……貴崎奈緒―――妹さんは」
「奈緒……ふふっ」
小さく笑うさくら。その様子を編集はいぶかしげに見る。
「どうされたのですか」
「あははっ、これは傑作よ。この作品が私の最後の作品とする。そしてこれは傑作。最高の出来にはなるわ。本当妹想いのこだわ。最後の最後に私にいい想いをさせてくれるなんてね!」
狂ったように笑い続けるさくら。編集はただ一人この姉妹の異常性におびえなにもできずに部屋で佇んだ。

作者プロフィール

ツバサ
小説家になろうでライトノベル、ファンタジー、恋愛ものを中心に描くなろうクリエイターです。

作者あとがき

まずはお読みいただき、感謝もうしあげます。
さて、この物語では常に憂鬱な展開を繰り広げるとともにハッピーエンドを描かないように気を付けました。
また、佳子もあくまで代筆に加担していた被害者ではない加害者。佳子が幸せになる作品を書きたくなかったというのも本音です。
描き方次第で加害者が被害者にも、被害者が加害者にも見れるのは小説の、フィクション作品の面白い部分かもしれませんね。

たまごライター彩葉のコメント

まず、文章が読みやすい! ノンフィクションストーリーを書き続ける奈緒の心情がひしひしと伝わってきました。
物語の筋通りに彼女が自殺する物語かと思えば、まさかの展開。実のところ幽霊展開の作品は多かったのですが「ええ!?」と思わず言ってしまうようなまさかの展開はこちらが一番でした。奈緒の心情に寄り添ってしまうからこそ余計に驚いてしまうのでしょう。素敵な作品を、ありがとうございました。

 - たまごライター彩葉に挑戦 , ,

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Comment

  1. 岡本ジュンイチ より:

    ツバサ・作 『ゴーストライター』 私的感想文

    ツバサさん、お疲れ様でした。
    僕は自称・アマチュア戯曲作家の岡本ジュンイチと申します。

    今からここに僭越ながら感想を書かせていただきますが、
    これは普段小説を読まない、あくまで戯曲好き
    いわゆる演劇バカからの視点で書かせていただきますので、
    ある程度参考程度に読んで下さると幸いです。

    正直申しますと、
    この作品はとても入り込みやすい作品でした。
    それは、作者のモヤモヤした気持ちと言いますか、
    真実味のある描写・文章の運びが僕の興味を引いた訳なんですね。

    あと、物語の構成としてもすごく面白く出来てると思います。

    ただ、少し謎が残ると言いますか、理解に苦しむ所があります。
    それは、ラストです。
    あのラストは、一目読んだところ
    ゴーストライターである妹が幽霊となって作品を書いたという事だと思うんですが、
    いわゆるその幽霊オチというのが、
    僕から言わせてもらえばよくありがちな設定だなと思いました。
    もしそれをどんでん返しにするつもりだったのでしたら、
    それは少し、失敗しているように感じました。

    それともう一つ、最後のその姉の反応ですね。
    それは、方針としてはいいと思います。
    ですが、やっぱり理解に苦しむんですよね。
    何で彼女は妹を犠牲にしてまで、
    自分が書いた訳でもない作品による名声を求めたんでしょうか。

    それはツバサさんなりの考えがそれなりにあっての事だと思うんですけれども、
    それにしては、まだ足りないように感じます。

    本作のような終え方ももしかしたらアリなのかもしれませんが、
    読者の僕としては、むしろ
    その先をもう少し読んでから、そこでこそ大どんでん返しを受けて、
    もう少し腑に落ちた感覚を受けたいです。

    いいセンスしている作家さんだと思ってます。
    だからこそ、そういう事を強く感じたんですね。

    次回作に期待します。
    僕も自称であれ、戯曲作家として精進していく所存であります。

    お互い頑張りましょう。

               アマチュア戯曲作家 岡本ジュンイチ

  2. 岡本ジュンイチさん、ありがとうございます。作者のツバサです。
    さて、ご指摘通りこの作品はよくある幽霊オチを使わせていただきました。ですが、私が描きたったのはその部分ではありません。これはどんでん返しの極始めの部分です。
    これだけならば私もどんでん返しではあるが超ではないと判断いたします。私が描きたかったのは姉のさくらの様子です。
    当初怯えたようにみせるのにそれを喜ぶ様子。また、赤の他人と思いきや姉妹だったというオチ。
    小さなどんでん返しが幾つもあつまり超どんでん返しになるという寸法でした。

    そして、姉の妹に書かしてまでの部分。これはキチンと伝わっていなかったのは私の技量不足でした。
    姉は有名になりたいがために妹を使ったのではありません。もし、姉がただの一般人なら、もし、小説を書いてたとしても小説家でないのならこうはならなかったでしょう。
    さくらは恐れていたのです。周りからの評価を。
    ネットで見かけたことはないでしょうか?あの人は落ち目、あの人はもうオワコン、はては死亡説。
    そういったことを言われるのを恐れていたのです。
    ですが、これがラストと自分で銘打って辞めることが出来ればあの人は面白かったとずっと言い続けられる存在になります。
    私としては妹の死で悲しむのではなく喜ぶという様子を見せることでそれを表現したつもりでした。

    それでは、私も精進していきたいと思いますので頑張って行きましょう

コメントはお気軽に^^

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