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【たまごライター彩葉に挑戦ピックアップ作品:主人公の性別を曖昧にしなさい】ツバサ/ツバサ

      2015/06/30

【たまごライター彩葉に挑戦ピックアップ作品:主人公の性別を曖昧にしなさい】ツバサ/ツバサ

様々な難しそうなテーマで超短編小説に挑戦していただく、たまごライター彩葉に挑戦

たくさんの応募作品の中から、たまごライター彩葉(いろは)さんがピックアップした作品を、コメント付きで紹介いたします。最後には、グランプリ作品として「彩葉賞」も発表いたします。

今回の挑戦状はこちら。
主人公の性別を曖昧にしなさい。

ツバサ/ツバサ

やあ、この小説を読んでくれているみんな。こんにちは。
えっ?どうして僕が小説の中の人物だって知っているかって?何故だろうね?多分神様が……、おっと、神様っていうのはこの小説を作っている作者のことね。その神様がそういう設定にしたんだと思うよ。
だけど、この神様が変わり者でさ、実は僕のいるこの世界には僕以外何もないんだ。真っ白。つまり、この小説の世界には僕以外なにも決まってないんだよ。あっ、これじゃあ、誤解を産むかもね。僕の設定もまだ決まってないんだよ。だけど、僕という人物を出したくてそして僕が小説の中の人だということを知っているという設定だけがある状態。その状態で筆が止まっているらしくて暇だから僕はみんなに話しかけてみることにしたんだ。
おや?あれは?
なんかもやもやとした霧が出てきた。霧が消えて中からは……。
「きゃっ、ここは?」
「やあ、こんにちは」
「えっ、だれ?」
「僕かい?僕は……誰なんだろうね?」
「誰なんだろうねって……ふざけてるの?」
「ふざけてなんかないさ。じゃあ、聞くけど君は誰なんだい?」
「私?私は……。あれ?私は、誰なの?」
「ほらっ、みたことか」
思わず笑っちゃう。ああ、なんか目の前に人が出てきてね。この子もなんの設定も無いみたい。どう説明したものかな。
「あなたはなにか知ってるの?」
「知ってるからこそ、知らないんだ」
「えっ?」
「この世界がどんな世界なのかも知らない。僕が何者なのかも知らない。僕たちの言葉が何語なのかも知らない。知らないということを知っているんだ」
「知らないということを?」
「そうさ。まっ、いずれここの記憶も塗り潰されると思うから気にしなくていいよ」
「気にするなって、そんな無茶な」
慌ててるなーこの人。というか、この人やあなた、じゃ分かりづらいな。よし。
「君は今の間はAと名乗るがいい」
「名乗るがいいって、あなたは?」
「僕はそうだな。じゃあぼ僕はあああああとでも名乗ろうか?」
「長いしふざけてるの?」
「とんでもない。おそらく、日本で一番多い勇者の名前だよ」
ちょっと肩をすくめてみせる。まっ、統計をとったわけじゃないからわかんないんだけどね。もしかしたらタカシとかそういった名前の方が多いのかな?
「とにかく長い。私がAならあなたはBでいいじゃない」
「それもそうだね。じゃあ僕はBだ」
改めまして。僕はBだ。よろしく、読者のみんな。それよりも今までの話で分かったけどAはなにも知らないみたいだね。
「それで、これからどうしたらいいのかしら?」
「さあ?分からないよ。知らないことを知っている僕からするとここは座って待っていてもいい気がするね」
「ただ、待つだけ?」
「そうさ。いうだろ?果報は寝て待てって。寝はしないけどゆっくりしてればいいのさ」
僕はよいしょっと地面に座る。といっても、真っ白なんだけどね。そんな僕を見てから恐る恐るとAも座る。
「あれ?そういや、Aはおかしいと思わないのかい?」
「なにが?」
「この真っ白い世界がさ」
「世界って真っ白いものじゃないの?」
あぁ、なるほど。そういうことか。
つまりAにとって始めて見た世界がこの真っ白い世界だったから、世界とは真っ白いものだという認識なのか。
君たちにもわかりやすく言うと……そうだな。
君たちは今どういうことか頭を整理したいと思っているだろ?それを心理学用語でハウステルクの心理欲求っていうんだ。ハウステルクの心理欲求は君たちの世界でいう1984年にヨーロッパで発見され、今でも心理学者の中で研究が続いているんだ。始めて知っただろ?それもそうだと思う。だって、そんな心理学用語ないんだから。ハウステルクって誰だい?
だけど、君たちは今確かにこの気持ちはハウステルクの心理欲求だという名前でそれがいつ発見されたのかということを脳にきざんだだろ?
Aの身にも似たようなことが起きているんだ。始めて世界というものを目にしたから世界=真っ白だと認識しているんだよ。君たちが頭を整理したいという思い=ハウステルクの心理欲求と思い込んだのと同じようにね。
「Bは変なことを言うのね」
「ああ、僕は変わり者だからね」
Aの認識が間違っていると正すのもおかしなものさ。僕はあえてなにも言わないでおこうと思う。それに、神様が世界設定を決めたらこの真っ白い世界にいたという記憶も塗り潰されると思うしね。だって、設定としては僕たちが産まれるよりも前に世界が出来ていたということになるし。
その時、僕たちが座っているところが泥沼とかだったら嫌だな。頼むよ、神様。
「Bはいつからここにいるの?」
「僕かい?いつからだろう……?わかんないや」
僕は頭をふる。だって気がついたらここにいたわけだし。逆に言えばこんな風に喋っているという記憶を持って、たった今産まれた可能性もあるしね。
世界五分前仮説っていうんだよ。この世界は実は五分前に出来たっていう仮説でそれを否定することはできないってね。これは君たちの世界に本当にある仮説だよ?嘘だと思うなら調べてみたらいいさ。Wikipediaに乗っていると思う。
「本当に知らないことを知っているのね」
「そうだよ。ただしこれから起きるであろうことも知っているんだ」
「えっ?」
「さっきも言ったと思うけど君がAと名乗るのも僕がBと名乗るのも今の間だけ。そのうち名前が判明する。名前だけじゃない。ここがどういったところなのか。僕と君にどういった関係があるのか。全てが判明していくんだ」
「変な話……」
「ほんとにね」
ぐうの音も出ないや。さてさて、どうなる……。うっ、これは?
「B?どうしたの?その霧?」
なるほど。僕に霧がかかっているらしい。どうやら神様が設定を決めているようだ。
僕は???いや、私は佐藤彩香……いや、俺は工藤彰。いや、あたしは美琴……って、ちょっと、神様!?なにも決めてないの?
ああ、僕が私になったりあたしになったり俺になったり……僕が私であることも難しくなってきたぜ。
ああ、もう言葉が無茶苦茶だわ。
好きなだけいじってよ……。
と、あれ?全てを放棄しようとしたら一気に記憶が鮮明になる。なるほど。ボクはそういう設定なのか。
「B、よね?」
「まあ、そうだよ」
「まあって?」
「今のボクの名前は佐々木レイ。といっても、また、変わるかもしれないんだけどね」
ボクは肩をすくめてみせる。Aはそうなんだと呟いた。
世界=ここであるAにしてみればボクの姿かたちが変わることは無しも不思議なことでは無いらしい。それも今だけだろうけどね。

作者プロフィール

ツバサ
小説家になろうでライトノベル、ファンタジー、恋愛ものを中心に描くなろうクリエイターです。

作者あとがき

まずはお読みいただき、感謝もうしあげます。
さて、今回の話は一風変わったものでしたね。キャラクターから物語を作るという小説家のたまごさんがいらっしゃったら少し共感が出来るかも知れませんね。私は世界観や大まかな設定から決める人なんですけどね。
私は小説を作る上で常に新しい設定というものを模索しています。こういった設定も初めて作りました。こんな風に色々模索するチャンスを与えてくださる管理人のにわとりさん、そして彩葉さんには改めて感謝伝えます。ありがとうございました。

たまごライター彩葉のコメント

なんだこれは……と唸ってしまった作品。シンプルで分かりやすくベタな展開のはずなのに、思わず 作中に引き込まれてしまいました。作者は何もない真っ白な場所に新たな世界や人物を作り出し、秩序を作り、動きを与える。それはまるでその物語の世界にとっての小さな神様でもあるのだな……とこの作品を見て思いました。それを考えるとご自身の名前を作品タイトルに付けるのも素晴らしい発想ですね。ラストの主人公の形が決まってゆく描写も好きです。この後この世界に何が出来てどう物語が進むようになってゆくのかがとても気になります。
ご投稿、ありがとうございました。

 - たまごライター彩葉に挑戦 ,

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