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【たまごライター彩葉に挑戦ピックアップ作品・彩葉賞:オノマトペで遊びなさい】ドンッ!/ツナ缶

      2016/02/19

【たまごライター彩葉に挑戦ピックアップ作品・彩葉賞:オノマトペで遊びなさい】ドンッ!/ツナ缶

様々な難しそうなテーマで超短編小説に挑戦していただく、たまごライター彩葉に挑戦

たくさんの応募作品の中から、たまごライター彩葉(いろは)さんがピックアップした作品を、コメント付きで紹介いたします。最後には、グランプリ作品として「彩葉賞」も発表いたします。

今回の挑戦状はこちら。
オノマトペで遊びなさい

ドンッ!/ツナ缶

ドンッ!!
勢い良く飛んで来るソレに、僕は思わず上半身をそらす。
その<ドンッ!!>は壁に綺麗にめり込んだ状態になる。ちょうど<ド>の頭が半分ほど埋まり、壁にヒビを広げる形になっている。こんな壁にめり込む勢いで飛んできた<ドンッ!!>が自分の頭に直撃していたかと思うと、心底いま助かっている状況に感謝したくなる。もう一度壁に目をやっても、どう見ても、どう観察しても、壁に<ドンッ!!>が、めり込んでいるのだ。そして、パラパラと破片がこぼれ落ちる。

僕はマズイと思い、そらした上半身を少しひねるようにしながら正しい位置へ戻し、その<パラパラ>を避ける。案の定小さな<パラパラ>が地面に突き刺さるように壁から落ちてくる。

「小さい音でも、ダメか。」

僕はため息をつきながらも、人生で初めてヘタレな自分を褒め称えたいと心の底から思った。「怖いと思うからこそ避ける。まずは怖いと思う事だ。」これは誰の言葉だったか。きっと僕の言葉だ。たった1秒前の僕の言葉だ。決して偉人の言葉なんかじゃない。

なんてしょうもないことを考えては、「フフッ」と笑いが漏れる。と、自分自身が大きな過ちを犯した事に気付く。口元にフフッが現れる。

「これもダメかっ!」

僕は焦りながら体を捻り、フフッが急速的に自身めがけて飛んで来るのを避ける。
異様な体制になってしまった僕の体は当然のようにバランスを崩しガクッと膝を落とす。

その瞬間、地面から突き出したガクッに膝を打たれる。

ことの発端は今朝。

僕が目を覚まし、ふぁぁ~と大きなあくびをし、ベッドから起き上がろうと掛ふとんをバサッとめくった時に、そこに<バサッ>と大きな文字が浮かび上がった。しかも、浮かび上がったかと思えば、僕めがけて勢い良く飛んできたのだ。

咄嗟に反応し避ける事は出来たものの、寝起き一番に意味の分からない事にポカーンとする僕。すると、次は<ポカーン>と表示するものが空から降ってくる。物凄い勢いで。少し位置がおかしければこの<ポカーン>なんて間の抜けた文字が僕の脳天を砕いてたかと思うと。ヒヤヒヤした。

そう、もちろん、次は<ヒヤヒヤ>が襲ってくる。

周りで起きた音が全て僕めがけて襲ってくるのだ。
小さな音や大きな音までが、僕自身をめがけて襲ってくる。

だが、全ての音が襲って来るわけではなかった。例えば僕が上半身をそったり、捻ったりする時にも少なからず音はなっているはず。でもその音が現れたり襲ってきたりするような事は無いようだ。と言っても安心は出来ないけれども、それでも【襲ってくる音】と【襲ってこない音】があるのは確かだ。

そう例えば、【表現した音は襲ってくる】ような・・・、そんな自分自身でも意味を捉えない曖昧な憶測が出てくる。表現する、とはどういう意味なんだ。自分でなぜその言葉が出てきたのか、わからない。

ただ、それを今考えるほど僕に余裕はない。なんとなくそう思った程度の事だ。次にどんな音が襲ってくるのか。そう考えただけで少しも緊張が緩むような事は、したくない。

僕は身構えた状態で部屋の至るところを見渡す。
ゆっくり、音を立てないように、ゆっくりと右から左へ、上から下へ、前から後ろへと視線をずらしていきながら、どんな【襲ってくる音】が来てもすぐに対処出来るように……──。

──と思っていたが、特に次の<音>が飛んで来る様子は無さそうだ。
どうも静かで、他の音がなっている様子はない。この状態を維持していけば、いつか音が襲ってくることはないかもしれない。と僕は考えた。

部屋はシーンと静まり返っていた。

そして僕はハッとする。

──後ろを振り返る。

大きな<シーン>がそこにはあった。そして上を見上げれば<ハッ>が今にも落ちてきそうに漂っている。

一気に2つも避けれるのか…。僕は額からタラッと汗を流す。心臓がドクドクドクドクと鼓動を早める。僕の前方には徐々に<タラッ>と<ドクドクドクドク>という文字が姿を表し、今にも襲ってきそうに、漂う。

すると、<ドクドクドクドク>という文字が、<ドク><ドク><ドク><ドク>と4つに分かれる。長い音は分割しても使えるらしい。便利な事なもんだと鼻で笑いそうになってやめる。これ以上敵を増やすわけにはいかない。

この状態を言い表すなら、まさに万事休す。一度にこの7つの文字が襲ってきてしまったら、きっと避けれないかもしれない。さて、僕はどう行動するのが一番正しいのか。一番生還率が高いのか。考え始める。

どうにか、助かる方法はないか、どうにか逃げだす方法はないか、最低でも、どうにか生き残る方法はないのか。

僕は頭の中で考えを巡らせる。いつこれらの文字が襲ってくるかわかない緊迫状態で、緊張状態で、膠着状態で、考える。

と――、

ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリッ!!!!!!!!!!!!!!!

――目覚まし時計が、大きく、大きく、音を鳴らした。

──────────

ハッと、目を覚ます。

いつもの知っている自分の部屋の天井が、視界一面に映る。
いつの間にか寝ていたようだ。そして、いつの間にか起きてしまったようだ。

なんだか頭の中にモヤモヤっとした記憶が残る。どうやら夢を見ていたようんだ。内容はあまり覚えていないが、とにかく変な夢だったように思う。そう考えながら頭をボリボリっと掻いた。

なぜだかその瞬間に少しだけ体が強張った。理由は分からないけれど少しだけ体に力が入ったように思う。

僕はベッドから立ち上がると机の上に電源が入ったままで放置されているノートパソコンの画面を見た。そこには1つのWEBサイトが映しだされていた。

「この課題どうすっかなー・・・・」

そこには僕が苦手とする課題が書かれていた。こんなものを書くとなると、恐怖で夢にまで出てきてしまいそうだと僕軽い身震いを覚える。

そこに表示された文字は「オノマトペデアソビナサイ」

僕はそのノートパソコンをパタンっと閉じ、キッチンに向かい朝の日課である温かいコーヒーを入れる準備をした。

インスタントコーヒーの粉を入れながら、ウォーターサーバーからお湯を注ぐ。

コポポポッとグラスの中が面白い音を立てる。

作者プロフィール

ツナ缶
ツナ缶と申します。
昔から小説や話を考えるのが好きで、ノートに書いたり頭で妄想してたり……。最近からやっとパソコンで実際に小説を書いてみようと思い始めて、色々書いている人間です。

作者あとがき

こういう文章を書いている時に、自分自身が「あぁ、強情っ張りの意地っ張り、ひねくれものの天邪鬼なのだ」と考えてしまいます。オノマトペで遊びなさいというお題だったので、普通にオノマトペを楽しく表現したらよかったのにと自分自身も思いますが、書き上げたらこんな感じになってました(笑)はじめての挑戦でしたが、テーマや縛りをもって書くことの難しさを感じました。オノマトペって表現しなくても良いけど、表現したらどこまでも情景が見えて綺麗な文章になりますよね。ただどうしても苦手というか、気遣いがないのか、うまく表現できないなぁと毎回反省します。なので今回のお題は自分自身の挑戦という意味でも、とても楽しく書くことが出来ました。僕は小説や話を書いている時は、例えば落語のような感じで「オチ」を結構考えます。そして、実は「オチ」が結構複数になってしまうこともあります。ここでオチてもいいし、ここでオチても良いというような。読んで頂いた方なりのオチを探してもらえればと思います。

たまごライター彩葉のコメント

オノマトペが様々な形で襲ってくる……これぞまさに『オノマトペで遊ぶ』を体現しているものだと感じました。そう、今回のお題は『オノマトペで遊ぶ』です。『オノマトペを使いなさい』ではありません。ツナ缶さんはそれを一番体現していたように思われましたので、彩葉賞とさせていただきました。
焦りや静寂さえもオノマトペになって襲ってくるという発想に感服です!

彩葉の総評

久しぶりの彩葉に挑戦。一体どれほどの投稿者がいるのだろう……全くいなかったらどうしよう……と不安に思っていましたが、なかなかの投稿数に呆然としました。
今回のお題は『オノマ トペで遊びなさい』
『使いなさい』ではなく、『遊びなさい』です。
小説の中でオノマトペを使うというのはよくあること。オノマトペが自然に使われているだけでは遊んだことにはなりません。読者が『この作者はオノマトペで遊んでいるなあ』と感じるほどオノマトペを主役として扱わなければ意味がありません。
今回はそれを基準にして選ばせていただきました。
その結果、ピックアップ作品が一つ。彩葉賞が一つ。
今までの中で一番少なくなってしまいました。
だってみなさん全然遊んでくれていないのですもん。

前にも書いたような気がしますが、この『彩葉に挑戦』は文章力だけで選ばれるものではありません。あくまでお題をどうくみ取ってどう生かせるか、で す。それができれば今までの略歴など一切関係がありません。簡単に下剋上できてしまいます。
発想力とひらめき勝負です。それを心に刻んでこのコーナーへ来てください!

では、次回の挑戦もお待ちしております。

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