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【美食家のたまご】2皿目:PILIPILI(ピリピリ)のグリーンカレー(中編)

      2016/11/07

美食家のたまごとは

美食家のたまごでは、本当に実在する飲食店と、その料理を、小説仕立てでお届けします。物語は半分フィクションですが、基本的に登場する店舗や料理はノンフィクション、つまり本当に実在する店舗です。

「美食家のたまご」のまとめ読みはこちらから。

2皿目:PILIPILI(ピリピリ)のグリーンカレー(中編)

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ハチが私を連れてきたのは、意外にも会社が入っているビルの斜め前にあるお店だった。
一見、お洒落な二階建てのアパート。お店はその一階部分に位置している。
洋風の扉の横には、エメラルドブルーをした看板。そこに…なにか謎の生物の絵と、「PILIPILI」という文字が描かれていた。
PILIPILI。それがこのお店の名前らしい。

「ねえ、ハチ。PILIPILIってことは、辛いの?」
日本人的発想かもしれないけれど、「ピリピリ」というと、どうしても辛いものを想像してしまう。
別に辛いものが苦手なわけじゃないけれど、少し前に流行ったハバネロや激辛タバスコレベルになると少し苦手になるかも。私が看板を指差しながらそうハチに尋ねると、
「辛くないものもメニューにはありますし、辛さ専門店ではないです」
「そうなんだ、安心」
「あ、ちなみにPILIPILIってスワヒリ語でとうがらしって意味らしいですよ」
お店の方が前に教えてくれました。ハチは笑顔で私に説明をして、さっさと扉を開けて中に入っていく。
「……」
それ、本当に大丈夫なの? 私の頭に一抹の不安がよぎる。
でも、ハチは店内に入ってしまったし、このまま帰るわけにも行かない。私もドアを開けて中に入る。
店内は、外見のアパート体から考えるとゆっくりと食事が出来るスペースになっていた。
窓の位置が良いのか、店内への採光も良い。また壁や床も落ち着いた色合いになっており、食事をするのにもゆったりとした気持ちになれそうだ。
でもやはり一番は、店内に配置されたインテリア。
ハチから「多国籍料理のお店です」と事前に聞いていたので驚きはしないけれど、特徴的な置物やお皿、タペストリーなどが綺麗にインテリアとして飾られている。
「へえ……お洒落ね」
恐らく大方の女性は、アジアン雑貨やエスニック雑貨などが好きな傾向にあると思う。
それは私も例外ではなく、ふだんあまり見る事がないこれらの雑貨に、思わず眼を奪われた。
すると、
「店内の雑貨は、ここのマスターが現地で選んでご自分で買い付けされているそうです」
「え!? 現地で?!」
「そうみたいです。それも、現地で有名なものとかだけじゃなく、一般家庭においてあるような雑貨も。だから、親しみやすいんでしょうね」
「へえ……」
「それより先輩、早く席に着きましょう。席、なくなっちゃいますよ」
そんな私を角のテーブル席に座らせつつ、ハチが笑顔でそういった。
見ると、店内はサラリーマン風の人々でほぼ満員。うちの会社の人もいれば、別の会社の社員証をつけている人もいる。
よく見ると、近所の主婦らしき人々がランチをしにきたのか座っている席もあれば、一人でもくもくと食べている若い女性も居る。
奥のほうでは、エスニック系の料理を出す店には珍しく、小さな子供をつれてきている母親と祖母の三人組なんかもいる。
お昼時に、サラリーマンが多いお店。しかも女性一人や親子三代でも気軽にやってきて食べたくなるお店。そういうお店に、間違いはない―――私はそんなことを思う。
そうこうしている内に、店員の女性がメニューとお水を持ってやってきた。
ランチメニューは四つ。一つは日替わりで、残りは定番ランチメニューとなっているらしい。
「えーと……」
今日の日替わりは、ハンバーグか!私がそれを指差そうとしたところ、前回同様またもやハチが、
「Cメニュー二つお願いします」
「グリーンカレー二つですね」
「はい」
と、私の意志を無に勝手に注文してしまった。
「ちょっと!」
「はい?」
「はい? じゃないわよ。何でいつも勝手に注文しちゃうのよ!」
「あれ? 先輩グリーンカレー嫌いですか?」
「嫌いじゃないわよ。むしろ好きよ! 好きだけれども!」
ハンバーグに一瞬心ときめいた私をどうしてくれる! と私がハチをにらみ付けると、
「ここのグリーンカレーはね、リピート率かなり高い絶品です」
「え?」
「まず、見たら驚きますよ」
そんな私を黙らせるように、ハチがにやりと笑いながらそう言った。
確かランチメニューには、インドカレーや骨付きチキンカレーなんかもあったはずなのに、なぜグリーンカレーなのか。
多国籍料理店ならでは? いや、カレーは好きだからいいんだけど、本当にいつもいつも、強引なんだから……私ははあ、と小さくため息をつく。
でも、程なくして目にする光景に、私は度肝を抜かれることになる。

たまごライター:八湊真央
writer_mao_100静岡県在住の、会社員兼一児の母兼フリーライター。ライターのお仕事ではコラムを中心に書いています。その他、中学生の頃から小説も書いています。現在、オリジナル小説を「pixiv」「小説家になろう」にて掲載中。フォロー大歓迎。二次創作サイトは「Cloud9+cafe*」。Twitter:@n_wing0224

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