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【絵かきのたまご】第一回コラボ作品 葉月一生/柴田花蓮(八湊真央)

      2017/02/13

【絵かきのたまご】第一回コラボ作品 葉月一生/柴田花蓮(八湊真央)

絵かきのたまご:葉月一生
小説家のたまご:柴田花蓮
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十一番目の末姫と竜の刻印

月も星もない夜の深い闇の中、するりと一筋の風が吹き抜けて行った。
例え夜でも、夏であれば早々気温は下がらない。だが吹き抜けた風は、思わず身をブルリと震わせるほどの冷たさである。

「もっと厚着すれば良かったかしら」

……大陸内部に位置する、とある山林。その山林の中に設置されている祭壇の前に立つ女性が、そんなことを呟きながら、羽織っているジレをかき合わせる。

白いブラウスに黒いジレを羽織り、長い膝下までの皮ブーツに合う、細身の黒パンツ。一見すると男性の様な出で立ちであるが、ブラウスの胸部分には女性らしい緩やかな膨らみがあり、コーラルブルーの瞳に、金色の美しく長い髪を後ろで一つに束ねた髪型。そしてクルンとした人形を思わせる長い睫毛に、ぽってりとした唇。それを見れば、それが女性であると認識を変えざるを得ない。年の頃は十代半ば。まだ幼さの残る顔は、女性と言うよりも少女、と表現するのが的確であった。

「厚着なんて、戦いの邪魔になるだけですよ」

そんな彼女の横には、一人の男性がいた。
こちらは一目で男性とわかる筋肉の付き方をした体型であり、漆黒の闇に映える銀髪に、アイスブルーの瞳。黒シャツに、黒パンツと全身黒づくめである。年の頃は十代後半から二十前後だろうか。辛辣な口調にも関わらず、こちらもまだ顔に幼さが残っているので、彼も男性というよりは少年、いや青年の部類である。

「姫様」
「レオン? 私にはエマという名前があるのです。約束したでしょう? 旅の間は姫ではなくエマと呼ぶと」
「ああ、そうでした。ではエマ様」
「わかったわ」

エマは満足そうに頷くと、手を胸の前で組み、目を閉じて祭壇に祈りを捧げるポーズをした。

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……さて。何故エマとレオンが、深夜このような場所にいるのか。それを知る為には、まず二人の素性を知らねば始まらない。

エマは、エマ=フィリオ=リーナが彼女の本名であり、風光明媚なリーナ王国の姫君である。ただし姫君と言っても、第十一皇女。五男十一女いる兄弟姉妹のいわば末姫である。

女性皇族として生まれた場合、大抵は政略結婚等で同盟国などに嫁に行くのが、この時代の常である。戦略結婚と言うと、遥か遠い国では末姫が政略結婚で他国に嫁いだものの、やがて嫁ぎ先の国で起こった革命により、断頭台の露と消えたという例もある。リーナ王国にはそこまで複雑な事情はないのだが、昔から誕生した姫君については、十八になる年に近隣の国へ嫁に行くというのが習わしであった。

エマは今年で十六。既に嫁ぎ先は決まっているようで、つい先日、それを父である国王・ギーナに告げられたのである。

エマの姉達は、今回のエマ同様十六で嫁ぎ先を告げられ、そこから嫁ぐまでの二年間は城で「花嫁修業」をしていた。だが、元が活発な性格のエマは、「花嫁修業」よりもその二年間、「旅に出たい」と、ギーナに申し出たのであった。

リーナ王国では、姫君を嫁がせる際、調度品や金品などの他に、姫ごとに異なる「宝物」を持たせる習わしがある。宝物はその姫ごとに宮廷魔道士の占いにより決められ、その占いの結果を受け、十六から嫁ぐまでの二年以内に、城に仕える騎士の中でも優秀な騎士が、その宝物を探しに行くのである。
エマに告げられた宝物は、「竜の一族が古に世界のどこかに隠したという三つの魔道具」。魔物を消滅させる力をもつ鏡、竜神の加護を受けているという剣、そして光闇を逆転できる力を持つ玉であるという。今までは大抵一つ、多くて二つ。しかも魔道具ではなく、宝玉の類だったはずなのだが、何度占いをし直しても結果が同じなので、きっとこの結果に誤りはないのだろう。

……数多くいる姫君の中でも末姫というのは、エマにとって窮屈であることこの上なかった。皆口には出さないが、十一人も姫がいると、末姫になればなるほど扱いがぞんざいになることもある。それに対してエマ自身も何も言わないし言うつもりもないが、外にも自由に出られず、尚且つ城の中ではそのような扱い。元が活発な性格ゆえ、窮屈に思うなというのが無理な話である。

そんな中嫁ぎ先の告知と占いの件があったので、エマはそれを探す旅に自ら出たいと申し出たのである。当然ながら最初はギーナに反対されたものの、

「今回の任務に就く予定の騎士は、かなり優秀でございます。必ずや、エマ様をお守りいたしますでしょう」

ギーナが絶大な信頼を置くリーナ国騎士団長のその言葉が後押しとなり、必ず二年で戻ること、危険と感じたらすぐにリーナへ戻ることを条件に、エマが旅に出ることが許されたのであった。

ちなみにこの「かなり優秀な騎士」というのが、エマと共にいるレオンである。
レオンは三年前にふらりとこの国にやってきて、騎士団へ入団したらしい。素性はともかく、入団後はその優れた腕を国の為に生かし働いている為、今や騎士団の皆から信頼を得る存在となった。腕前も、リーナ国内ではその右に出るものはいないという。

そんな腕利きの騎士を二年も国外に出して大丈夫なのか、とエマも心配はしたが、どうにかなるという所が、リーナ王国が平和であるという証拠なのだろう。

ただ……このレオン、エマに対してはかなりの皮肉屋だった。というのも、エマには、「これだから世間知らずの姫様は」と言わんばかりの態度なのである。レオンは、エマが旅に同行するのを最後まで反対していたようなので、仕方がないのかもしれない。だがエマにしてみれば、望んでこの環境に生まれたわけではないので、複雑である。

「良いですか、エマ様。どうか、私の邪魔だけはしてくださいませんよう」
「わ、分かったわよ! それに私だって、城で剣の訓練はたくさんしてきたんですからね!」
「実戦と訓練は、全く違うものですよ」

これだから、世間知らずの姫様は。レオンは声には出さなかったが、絶対にこう続けたかったに違いない。エマはそんなレオンに対し、心の中で舌を出してみせたのだった。

……そんな経緯の元、二人はこの場所にやって来たのである。

宮廷魔道士の話によると、宝物が収められている祭壇の前で念じていると、「宝物の番人」が現れるという。そしてその番人と戦い、勝利すれば宝物を手に入れることが出来るらしい。番人と戦うのは誰でも良いらしいが、番人を呼び出すには何故か女性と決まっているようで、エマがこうして祭壇の前で念じているのである。ちなみにエマ本人はこのまま番人と戦うつもりでいたのだが、流石にそれは危険であり、尚且つレオンに嫌味たっぷりに事前に説得されたので、番人が現れた後は選手交代の予定なのである。

エマは言われてきたとおりに、神経を集中し祭壇の前で念じた。すると……それまでそこに広がっていた深い闇が、急激にサア……という音と共に、白い光で浸食された。そしてその白い光の中目を凝らすと、その場所にいつのまにか誰かが立っている。

エマの腰の高さほどの身長の、人間のように見えた。光のせいでシルエットしか確認できないが、この人物が宝物の番人なのだろうか?

「……あなたが、番人?」
エマは白い光越しにみえるシルエットを見つめながら、その人物に語り掛ける。だが反応が何もない。

「……ねえ、聞いているんだから、答えなさいよ! あなたが番人なの!?」
エマは少しだけ声を荒げて再び問いかけた。それに対してレオンが「聞いているって態度かよ。これだから……」と例の台詞を吐き捨てるも、勿論エマの耳はそれを聞き流す。

するとそこで、異変が起こった。……なんと、それまで何も語らずエマの前に立っていた人物が、エマに向けてゆっくりと左手を差し出したのだ。ただ差し出したとはいっても、掌はエマの方に向いている。

「え? 握手?」
手を差し出されたら、それは握手のサイン。皇族ならではの悲しき習性と言うのだろうか……ついつい普段の癖で、エマは無防備にその人物に手を差し出そうとした。だがそんなエマに対して、

「エマ様、伏せて!」

レオンがそう叫んだかと思うと、エマの身体を強く引っ張り地面に引き倒す。それと同じタイミングで、ゴウ! と音がしたかと思うと、エマがそれまで立っていた場所に光の矢が走り抜けていった。走り抜けた光の矢は、辺りに生えていた木々をあっという間に貫き消滅させる。

「……な、何あれ」

ヒラ、ヒラ……と消滅せずに宙を舞った葉っぱを頭に乗せながら、エマが地面から起き上がり震える声で呟くと、

「魔法を放とうとしている者に自ら近寄るなんて、何考えているんですか!」
「そ、そうなの? 手を差し出してきたから、てっきり握手をするのかと……」
「ああ、もう! これだから世間知らずの姫様は!」

レオンは明らかに苛ついた口調でそう叫ぶと、「いいから大人しく隠れていて下さい!」とエマを急いで立たせて、近くの茂みへと突き飛ばす。そして自らが所持していた大剣を腰の鞘から引き抜くと、魔法を放ったシルエットの人物に対し構えた。どうやら、既に宝物を得るための戦いは始まっているらしい。

自分が思っている以上に実戦は上手くいかないどころか、このままでは本当にレオンのお荷物になり国へ返される。焦ったエマは、「大人しく隠れていろ」という指示を無視し、所持してきた短剣を手に、レオンの横へと飛び出した。

「ちょっ、人の話を……!?」
レオンがぎょっとした表情でエマに叫ぶも、当のエマは「隠れていたってやられる時はやられるでしょ!」と全く聞く耳持たない。

そんな二人に対し、先程同様、目の前の人物は左手を翳していた。翳した左手に、白く大きな光が集まっている。先ほど近くの木々を吹き飛ばした比ではない。

「さあ、来なさい! 私が相手に……」
エマは気合十分に短剣を構え威勢よく叫ぶも、そうこうしている内に、翳された左手の光は半径一メートル以上の大きさまで達していた。

「け、結構大きいわね、光……」
「結構どころじゃないです! まともに当たれば確実に死にます!」
「に、逃げた方がいいかしら」
「だから、さっきからそう言っているじゃないですか!」

その状況でようやくこの状況を理解したエマの呟きに、レオンが焦れた様子で叫ぶ。そして、「いいから私の後ろに!」とエマを庇うように立ち、大剣の柄を強く握りなおす。そんな二人に対し、左手を翳した人物は容赦なく光を放った。

……ゴオオオオウ!

耳を塞ぎたくなるような轟音と風を巻き上げながら、巨大な光の矢が二人に向かって飛んでくる。

レオンは大剣を水平に構え「水の盾<アクアシールド>!」と叫ぶことで、自分達を守る為の壁を急いで作り出した。光の矢はその壁に勢いよくぶつかり…多少は二人の身体をかすめたものの、その部分から左右に分かれて、遥か後方へと飛んで行った。とりあえず回避は成功した様だ。

「エマ様! 怪我は!?」
レオンが背後のエマに声をかける。

「大丈…ええ!?」
エマは自分の無事をレオンに伝えようとするも、その途中で言葉を失う。

なんと光の矢が通過した際、エマの身体にそれが触れた部分…そこに、妙な数字が刻印されていたのである。「六三〇七二〇〇〇」意味不明の八桁の数字であった。

「何よ、これ!」
エマは必死にそれを拭うも、消えてはくれない。それどころか、ある一定の時間ごとに数字が減っていくのだ。それはまるで、エマの「時間」をカウントダウンしているかのようである。

驚いている二人に対し、そこで初めてシルエットの人物が呟いた。

『我らが宝を心から欲すならば、その意思を見せよ。全ての宝が揃う時、その呪いは消える。ただし途中放棄するならばその意思は偽りとみなし……偽りの代償としてお前の命を貰う』
お前が所望する宝は、それだけの価値がある。人物はそう呟くと、フッと姿を消した。その代りその場所には、小さな木の箱が置かれていた。

レオンが箱の中身をあらためると、中には竜の文様鮮やかな鏡が収められていた。どうやらそれが、三つの魔道具の内の一つらしい。

ただ宝物は手に入れることが出来たものの……二年以内に魔道具を全て手に入れなければ、呪いで死ぬ

国に戻り相談する時間さえも、勿体ない。
……後にこの二人の旅はリーナ王国の歴史に深く刻まれるものになるのだが、当然この時点で二人がそれを知るはずもない。

複雑かつ面倒な事情を背負ったエマとレオンの旅は、まだ城を出発して三日目にして前途多難、そしてこの刻印は、二人を今後も大いに悩ませるのであった。

エマ&レオン

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絵かきのたまごとは

コンセプトは、小説家のたまごと絵かきのたまごの出会い。小説とイラストの関係がますます深くなっている現代。小説にイラストを提供してみたい絵かきのたまごと、小説にイラストをつけてほしい小説家のたまごを募集し、描き下ろしのコラボ作品を制作・発表する企画です。

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