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【たまごの写真物語】眠ル魚/みや

      2015/05/18

【たまごの写真物語】眠ル魚/みや

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人間には時間が足りなかった。

一日24時間、ざっと考えると一般的な社会人であれば8時間働き8時間眠り8時間自由に過ごす事が出来るはず。
しかし自由になる時間は実質問題として8時間も無いのが現状。労働は割り当てられた8時間を優に超え、自由な時間を侵略していく。8時間の自由時間には食事や通勤も含まれているので、考えてみると一日に自由に過ごせる時間などほんの僅か…

労働を削る事は論外。睡眠を削る事は以ての外。ではどうすれば自由に過ごせる時間を確保出来るのだろうか?人間は考えた。割り当てられた其々の時間の中で有効的に時間を活用する方法ー

それは目を開けて眠る事。魚は目を開けて眠る、それと同じ様に身体は休ませた状態で脳は活動をし続けていれば、自由時間はもっと確保出来るはず。

科学者達は研究を進め、スリーピングアイズの開発に成功した。簡単な手術で睡眠中も目を開けている事が可能になり、眠りながら本を読んだり映画を観る事が可能になった。脳は活動し続けているのでその内容はもちろん、脳内にインプットされる。そしてスリーピングアイズは映画や小説などの娯楽だけに留まらず、眠りながらにして受験生は参考書や単語帳を見ながら覚える事が出来たし、社会人は仕事の資料を見ながら会議の準備が出来る様になった。

スリーピングアイズの普及は瞬く間に広まり、あっという間に世界中の全ての人々が眠りながらにして自由な時間を手に入れる事が可能になった。しかしスリーピングアイズには欠点があった。眠る時に目を開けている事が出来る代わりに、起きている時にも目を閉じる事が出来ないのだ。人間は目を閉じる事が不可能になった。瞬きでさえも…

だがその事にどんな不都合があるのだろうか?瞳の保護の為には定期的に目薬をさせば何の問題も無いので人々は何の躊躇も無くスリーピングアイズの手術を受けた。忙しい現代の人間にとっては瞬きする時間さえも惜しいらしい。目を閉じる事が出来ない事の唯一の弊害はキスをする時に気まずい…くらいのものであった。

新生児にも手術は施され、産まれたばかりの赤ちゃんでさえも目を開けたまま眠る事が出来る様になった。それにどんな価値があるのかと問われると両親は口を揃えて答えた。どうせ大きくなってスリーピングアイズの手術を受けるのだから、産まれてすぐに手術をして貰えれば手間が省けて良いのだと。寝たきりの老人にもスリーピングアイズの手術は行われた。寝たきりだから本人には自由な時間は腐るほどあるはずだが、家族達は眠ってばかりの寝たきりの老人に、もっと起きていて欲しいからと手術を望んだ。

赤ちゃんは目を開けて眠り、両親は不安になる事もあった。本当に眠っているのかしら?老人は目を開けて起きているが、家族は不安になった。本当に起きているのかしら?でもそんな心配を人々はたいして気にも止めなかった。起きていようが眠っていようが生きている事に変わりはないのだから…
その他の人間もやがて、授業中や仕事中でも目を開けて勉強や仕事をしているふりをしながら、実は眠っている…という不届きな行動をする者達が続出し始めた。起きていても眠っていても大差ないではないか、人々はそう考え始める様になってしまっていた。

魚が水の中を起きながら眠りながら漂うに、人間もまた空気の中を起きながら眠りながら漂う様になった。人間としての規則正しい社会生活の破綻が始まったのだ。

そしてスリーピングアイズの普及により、新たに産まれてくる生命にも変化が訪れた。瞼の無い子供が産まれる様になったのだ。人間にとって目を閉じる動作が不必要になり瞼が必要が無くなったのだから、正に好都合である。しかしこれは果たして進化なのか?退化なのか?それを考察する人間はもう誰一人としていないのだけれど。

あとがき

眠りながら頭の中で映画を観れたり本が読めたら良いのにな…と以前から考えていました。だって人生の三分の一を睡眠に費やしてるなんて、なんだか損をしている気分になるからです。

けれどこの物語の様に、将来的に技術の進歩でこのような事が可能になったとしても、それは果たして人類にとっては喜ばしい事では無いのかもしれません。睡眠…とは身体にとって必要な休息であるように、精神にもとても大切な休息なのだと感じるからです。

たまごライター プロフィール

たまごライター:みや
writer_miwa_100好きなもの:本の匂い*映画館で観る映画*iPhoneで撮る写真*サムライギタリスト MIYAVI*休日の朝寝坊*無邪気なワンコ*気まぐれニャンコ*甘いカフェオレ*手作りのパン*炊きたてのごはん*美味しいフィナンシェ…等々
私の居場所:星空文庫 時空モノガタリ

たまごの写真物語とは

作者の意図を詳しくかつ正確に伝えることができる小説と、ほぼ一瞬でイメージを伝えることができる写真。

特徴が互いに相反する写真と小説が融合したとしたら、どんなことが起こるのでしょうか。奇跡のような化学反応が起こるのか。それとも、いいところを打ち消し合ってしまうのか。

たまごライターみやさんを中心に、オリジナル写真を使った小説作品をお届けします。
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