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【こだわりのアイテム】執筆にこだわるための3つの手順/黒田なぎさ

      2017/03/26

【こだわりのアイテム】執筆にこだわるための3つの手順/黒田なぎさ

(杉本さおり : 書庫で1日のほとんどを暮らす図書館司書。作家志望)
(リーブラ : 端末に搭載されたAI)
(緒方   : 20代のエンジニア)
(「たまごたちの書庫シリーズ」の設定を使っていますが、未読でも大丈夫です)

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「さおりさんて、こだわりのアイテムってあります?」
緒方がイスに座ったまま伸びをする。若くて明るいこの男は、暗い書庫のなかでは浮いて見える。
彼はリーブラのメンテナンスと称して、実際はサボリに来ている。こんな地下の書庫に来てもリーブラのサーバーはない。

何で急にそんなこと、と私が苦笑すると、緒方は「いやいいモンあったら参考にしようかと思って」と頬づえをついた。
「さあ……キーボードぐらいじゃないの。ふつうに」
「へえー、なんか、意外っすね」
「あなたほどじゃないと思うけど、キーボードはまあ電気屋さんで感触を確かめて買うかな。いちおう商売道具だし」
いま使っているキーボードは、お店で1時間ほど試し打ちをしてから選んだ。ノートPCを使うときにもそのキーボードを使っている。キータイプに力が必要なものはあまり好きではない。
「キー選びだったら俺呼んでくださいよー。長いこと打っても疲れないキーボードありますよ? やっぱそれなりの値段のやつ買った方がいいっす」
彼を呼んだら、よけいな話がものすごく長くなりそうだ。プログラマーだからというわけではなく、単にこの男がおしゃべりなのだ。

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「あと座り仕事ならイスじゃないですか? 俺の会社もプログラマばっかなんで、イスだけは10万前後のやつ使ってますよ」
<さおりさんはほとんど立ち仕事ですよ。サボってるあなたと違って>
机の上に置かれた、端末のスピーカーからリーブラの声がする。
うるせえよ、と緒方はリーブラに向かって顔をしかめる。

<小説を書くときのアイテムだと……ポメラとか、小説の管理ソフトとかですか?>
「うん……まあ、ScrivnerとかArtOfWordsとかあるけどね。長編で資料が増えたら確かにいいんだけど、使ってみたけどまだしっくりこなくて。小説で、ああやってデータを整理するのは苦手なのよね……必要って感じたら使うと思う」
一応、司書という仕事がら、いろんな資料やツールを使う機会は多い。調べものをするときも、データベースや便利な事典を知っているかどうかで、成果が大きく変わる。小説を書くときでも便利なツールはどんどん使う。良い成果を出すために、最新の道具を使うことに抵抗はない。緒方には言わなかったが、道具が自分に合うかどうかもだいぶこだわる(電子書籍は別だけど)。
<イチロー選手も道具にはこだわりますよね。スポーツ選手は成績に直結しますから>

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私は腕を組んだ。
「でもねえ……さいきんこだわることって、どうかなあって思うのよ」
端末のディスプレイがチカチカと光る。
「例えば、キーボードにこだわるとかは、まだいいわ。イスにこだわる、もいいと思う。
でも、創作でこだわる、っていうのは?
原稿の1文字1文字、改行や余白の大きさ。
同人誌作るときの、本の装丁やレイアウトの細かいところ。

こだわってやってると、だんだん意味があるのかどうかわからなくなってくるのよ。労力と成果が見合ってないというか、良かれと思ってやってるけど本当にいいのかなっていうか。作者は気にしてたけど読者はほとんど気にしていなかった、ってことよくあるのよね」

<さおりさんは、細かいことにこだわりそうですもんね。完璧主義者というか」
まあ、そうよ、と私はうなずく。褒められていると受けとっていいのだろうか。

<もともと『こだわり』という言葉は、悪い意味で使っていたという説もあります。過去のことにずっとこだわってるとか、小さいことにこだわってるとか。
コダワリは『拘り(こだわり)』。『拘束』とか『拘留』と同じ字です。追及して、とらわれているという意味です>

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緒方がこめかみを指でつついた。
「んー、こだわりの方向がちがうんじゃないすかねえ」
イスの足をグラグラと揺らす。
「こだわりのアイテムはじぶんのために選びますけど、創作のこだわりは、だいたい読む人とか、相手のためにする。だから答えが見つかりにくいんじゃないすかね。
俺も会社でアプリとか作ってるとき、こだわって叱られることあるんすよね。ユーザの目線に立ってない、って。まーお客サンにはパソコンとか全然使えないヒトもいるんで、しょうがないっちゃしょうがないですけど。
でもやっぱりこだわりますよ。プログラムのコードにもインターフェースにも。で、そういうのはアプリ使ってる人に反応聞けばいいんすよ。これ使いやすいですかって。小説ならアクセス解析でもいいし、本のレイアウトなら誰かに見せてもいいし。反応がわからないなら、反応を探せばいいんすよ」

緒方は苦笑した。
「って、オレ若いこと言っちゃいました? 世の中そんなにうまくいかないスか」
「まあ、いいんじゃない」
緒方の考え方は、なんとも彼らしかった。わからないならデータを取れということだ。ウェブの仕事をしているときなら、ページビューなどでユーザの反応を見ることもあるだろう。彼の考えは正しい。
リーブラの合成音声が書庫に響く。
何事も「やり始め」→「こだわる」→「こだわらない」の段階を踏むと言います(※1)。良いように追及したり究めたりすることは、答えを求めること、こだわることに必ずつながります。そのうちさおりさんもこだわりから解放されるのではないでしょうか?>
「じゃあ次の段階は、こだわりを捨てていくってことになるのかな。どれを捨てたら大丈夫かって」

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人は、成功者に必ずこだわりを聞く。
成功には何かしら理由があると思っているからだ。何かにこだわっているから成功しているはずだと思う。あわよくばそのこだわりを聞いて自分もまねをしたい。
そこで成功者が「なにもこだわっていません」と言ったら、拍子抜けしてしまう。聞く人はつまらないと思うし、納得できない。
<木を見て森を見ず、と言いますが、最初から木を見ずに森を見ていては、木の性質はわかりません。森は木の集合体です。森全体をよくするために、1本の木にフォーカスを当てるのは当然です。そのあと森全体を見られるかどうか、こだわらなくてもいいところを経験で学べるかどうか、でしょうか(※1)>

 

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たまごたちの書庫シリーズ(コラム連載)

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たまごライター プロフィール

たまごライター:黒田なぎさ
kuroda四国在住のプログラマです。中学生のころから小説を書きはじめ、新人賞への公募はまだ数年。ジャンルはエンタメ中心で、「小説家になろう」にて小説を公開しています。修士(工学)専門は対話システム。お気軽に絡んでやってください\(^o^)/ Twitter:@KosugiRan

 - こだわりのアイテム, たまごたちの書庫 ,

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Comment

  1. ★ こだわり=「便利グッズ」でなくて、悩んだり厳選したりするアイテムという意味かなぁとは思いますが……。

    上述したように、キーボードはさんざん触って買います。ノートPCでもキーボードは別です。
    あとは

    ★ プリンタ→ モノクロレーザーで、無線Lan対応、B5の自動両面印刷ができる、で選んだらかなり悩むことになり、何日も悩んだ気が……。
     とくにB5の両面印刷ってなかなかなくて。

    ★ こだわりと言えばこのコラム、読む環境に合わせて、html上でタグと一緒に原稿を書いていて……書きにくい……。たまごさんのページを勝手にDLして勝手に編集してます。

コメントはお気軽に^^

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