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【たまごの物語:男と女】遠い未来のオカルト記事 まとめ/梓野千紗

   

【たまごの物語:男と女】遠い未来のオカルト記事 まとめ/梓野千紗

約1000年前、この世界には2種類のヒトがいたそうだ。

●Report 1『人類の起源解明か!?』
大袈裟な見出しのオカルト雑誌によると、そういうことらしい。記事の内容は以下のように続いている。

・約1000年前の地層から、当時の人類と思しき生物の化石が見つかった。
・人類の化石だけでなく、住居、衣類、文献なども同時に出土した。
・その化石は2種類に分けることが出来るが、DNA鑑定などからその両者の違いは種の違いとは断定できない。
・同時に出土した文献を解読したところ、当時の人類には「オトコ」と「オンナ」の2種類が存在したようで、上記の2種類の化石はそれぞれ「オトコ」と「オンナ」だと思われる。
・800年前の戦争によりそれ以前の物を全て失った我々にとって、これらは重大な発見である。

オカルト、超常現象、超古代文明……そういったものが大好きな自分にとっては、非常に心惹かれる内容だった。
当然のことながら人類は1種類だ。非常に細かい、遺伝子レベルの差から生じる好みや性格などの違いはあるが、培養室の中で作られた人類はみんな背格好も、容姿も、能力も、全部が丸っきり同じ。だからこそ、どれだけ努力できるかが一人ひとりの人生を握っている。
そんな現代の常識を覆すかもしれない記事。
面白そうだ、続きを見かけたらスクラップしてみよう。

●Report 2『人類も性行為を行っていた!!』
前回の記事の続きが載っていた。内容は以下の通り。

・当時の人類と思われる生物の化石や、同時に出土した文献を詳細に調査したところ、彼らも性行為を行っていたと考えられる。
・人類以外の生物で言うところのオスが「オトコ」にあたり、メスが「オンナ」にあたる。
・性行為により「オンナ」が子供を宿し、次世代を育んでいく。
・「オトコ」と「オンナ」に分かれていた人類が、なぜ、いつから、どのように、現在のように統合されたかは現在調査中である。

人類が性行為を行い子供を宿していた、それこそ他の動物のように。
自分はそのことにひどく違和感を覚える。人類にはオスもメスもないし、性行為を必要としないし、子供は培養室の中で作られる。それこそが人類の定義であり人類が人類たる所以である。だから、性行為をするのは人類ではない。この記事の内容はまるで、鳥の祖先も海の中を泳いでいたという、進化の直線上にあるがゆえに全く別の生物を同一の生物として見てしまうような、浅はかな認識をはらんでいる。この場合鳥の祖先は鳥でなく魚だ。同じように、人類の祖先もまた人類以外の何かなのだ、決して人類ではない。
目新しい記事にしたいがためにそういったミスリードを潜ませるのは、よくある手法であり、それが違和感の正体なのだろう。結局は、この記事もそう言った有象無象のオカルト記事の1つにしか過ぎなかったということだ。

●Report 3『人類は作られた生物だった!』
どんなにつまらない小説や漫画でも、最後まで読まないと気がすまない質なので、このシリーズの記事は出る限り追っていこうと思うが、もはや自分以外にこの記事を追っている者はいないのではないだろうか。実際、この記事は一切ニュースにもなっていないし、胡散臭いオカルトジャーナリストでさえ言及していない、この内容が本物だとしたらこれほどまで人類史を揺るがすものは無いのに。
兎も角、第3弾の内容は以下の通り。

・1000年前、「オトコ」と「オンナ」に限らず、様々な種類の人類がいた。
・それらは民族や人種と呼ばれ、「オトコ」「オンナ」の区別とはまた毛色の違うものだったが、それらによって人類は棲み分けを行っていた。
・しかし、それらの違いによって戦争や紛争などが日常的に起こっていた。
・ある生物学者が、争いを無くすために人類間の違いを無くそうと考え、まずは「オトコ」と「オンナ」の違いから無くそうと考えた。そこで、「オトコ」でも「オンナ」でもない人類を、培養室の中で作る技術を発明した。
・作られた人類は、背格好から容姿、能力まで全て同じように作られた。
・当時の世界はこの生物学者に賛同する者と反対する者で二分され、ついには戦争に発展した。賛成派は優秀な人間を培養室で次々に生み出し、戦地に送った。反対派はその技術を一切使用しなかった。
・戦争は200年間続き、800年前に反対派の敗北という形で幕を閉じた。
・「オトコ」と「オンナ」が存在していた人類は全て消滅し、培養室で生まれた人類だけが残った。
・また戦争によって地球上の生物の大半が絶滅し、新しい生態系が作られるまで数百年かかった。
・その結果、現在の人類と世界が形作られた。

もはやオカルト記事というよりもただのSFチックな妄想を垂れ流しているとしか思えない。確かに辻褄は合っているような気がしなくもないが、どうもこじつけにしか思えない。まぁ読み物としてはありなのかもしれないが。
この記事に対してこれ以上感想や分析を述べることに、もはや意義は感じない。

●Report 4
「オトコ」と「オンナ」に関する続報は、その後1度として目にすることは無かった。雑誌自体がすぐに廃刊になってしまったからだ。あのような浅い記事しか書けないならばそれも仕方ない事だと思うが。
オカルト雑誌が1つこの世から消え去ったことは残念だが、未練はない。自分が読みたいのはあくまでオカルト記事であって、SF小説ではないからだ。

作者プロフィール

梓野千紗
最近、また小説を書きたいと思い始め、数年ぶりにWordに向かう日々。近い内に小説サイトに小説をアップしようと日々迷走している次第です。物書きとしてあまりに実績が無く、小説家のたまごと言うよりたまごのたまご状態ですが、読んでいただければ幸いです。
Twitter→@a_koisin

作者あとがき

タイトル通り、未来の話です。

『男と女』というテーマを見た時に最初に頭を過ったのは、男女の恋愛模様や心情といったものではなく、男女の性別が無かったらどんな世界になるんだろう、という思いでした。そして、それを常識として持っている人はどういうことを考えるのだろう、と。
このようなイメージから、後はドミノ倒しのように一気に書ききることが出来ました。

性別の無い世界、あなたはどう思いますか?
私は嫌です(笑)

 - 男と女

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