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【たまごの物語:男と女】ヒカルとアカリ/紙男

      2015/01/04

【たまごの物語:男と女】ヒカルとアカリ/紙男

「あら可愛いい。女の子ですか?」

かなり高い確率で、人は赤ん坊を見てそう訊ねる。それで男の子だったとしても、まぁ許される。赤ん坊は誰も彼も可愛らしいから。あるいは「男の子ですか」と訊ねて女の子だった場合、少々バツが悪いから。それでも、「男の子ですか?」と訊く人は、少なからずいるはずだ。
ヒカルが男の子と周囲から認知されるようになったのは、ニ歳を過ぎた頃だ。真ん丸な顔と瞳がそうさせたのだろう。100%の確率で「女の子ですか?」と言われた。
一方アカリは、三歳頃になるまで女の子に見られなかった。火がついたような元気の良さがそうさせたのだろう。「女の子ですか?」と訊かれたことは一度もなかった。

皆が間違えるのも無理はない。二人は格好が逆だからだ。
生まれた頃から、ヒカルは可愛らしいものを、アカリは格好いいものを好んでいた。そして私たちはそれを優先させていた。自分たち自身も、そうしてきたから。

「いっそ、逆に育ててみようか? ヒカルは女の子、アカリは男の子として」
イツキは、ブルーレイを観ながら、そんな悪魔的な台詞をさらりと言った。うっかり容認しようとした私も私だが。
「そんなことしたら、さすがに色々と問題だよ」私はスポンジに洗剤を含ませた。「トイレとか友人関係とか」
「僕は意外と何とかなったよ。それに、当時に比べたら、世間も大分寛容だよ。ランドセルとかランドセルとかランドセルとか」
「ランドセル推し半端ないね」
「黒むっちゃ欲しかったんだねぇ」
「私も赤がよかったなぁ」
「それにほら、よく言うじゃん、『自分が育てられたようにしか子どもは育てられない』って。僕ん家はそれに近いことされてたからさ。レイもそうだったんでしょ?」
「まぁ確かにそうだけどなんだけど…」と私の言葉は萎んだ。

洗い物を終えた私はエプロンを脱ぎ、イツキの隣に座る。途端に「大丈夫かな」と溢した。
「成るようにしか成らないよ」イツキは私の分の缶チューハイをコップに注いだ。「いきなり双子の男の子と女の子の親になった僕たちが、三年も子育てやってこれたんだから、きっと何とか成るよ。二人が将来、僕たちのことで弄られたり、僕たちのことを変だって思っても、僕たちは間違いなく二人を愛してるんだから、大丈夫だよ、きっと」
私は目頭が熱くなったのを感じた。「君ってホント男らしいよね」
「キライになった?」
私は頭を振った。そしてイツキの首に手を回し、顔を近づけようとする。
が、物音がしたので、素早く直った。

引戸を開け、寝室からアカリとヒカルが出ていた。アカリはヒカルの手を引き凛としていたが、ヒカルはアカリの手を握りモジモジとしていた。
「パパぁ、ヒカルがオシッコだって」
一応、パパと呼ばれたら、私が行くようにしている。だがこの時はイツキが率先してくれた。
「ヒカル、オシッコ行きたいの?」
「ん」とヒカルは眠たそうに頷く。「もれちゃう」
イツキはヒカルを連れながら、「ちゃんと起きれて偉いね」と褒めた。そして二人でトイレに入った。

私とアカリは、自然と目を合わせた。アカリの眼は、今まで起きていたのではないかと思うほどパッチリと開かれ、吸い込まれそうだった。
私はアカリに歩みより、しゃがんむ。「ヒカルを連れてきてくれてありがと」
「ぼくおにいちゃんだからね」
当然でしょ、と言わんばかりにアカリは胸を張った。すでにイツキの性格に似てきていた。
その仕草が可愛らしくて、私はアカリの頭を撫で撫でした。イツキ曰く、照れているところは私に似てるらしい。

ほどなくイツキとヒカルが戻ってきた。少し目が冴えたヒカルはペタペタと、アカリの元に駆け寄った。
「もらさなかった?」
「ん、もらさなかった」
「おねえちゃんにありがとは?」
「アカリちゃんありがと」
「だからおにいちゃんだってば」
アカリはよく、お兄ちゃんとお姉ちゃんが一緒になる。ヒカルはそれを知ってか知らずか、アカリをアカリちゃんと呼んで統一させている。
こんな何でもないやり取りが、私には幸せでたまらない。
「ねぇ、ヒカルとアカリは将来、男の子になりたい? それとも女の子になりたい?」
イツキは唐突に悪魔的な質問をした。
私もさすがにムッとした。まだその質問は今の二人には早すぎると思ったから。
しかし、私の反論を待たずして、答えは出た。
ヒカルはイツキに、アカリは私に飛びついた。そしてそれぞれの頬にキスをした。

作者プロフィール

紙男
紙のように真っ白な心と、紙のように薄っぺらな人間性の男。超短篇を中心に創作活動をしております。ラーメンとポケモンと睡眠が大好きです。

作者あとがき

初めまして、紙男と申します。
今後ともどうぞお見知りおきを…。

今回のテーマは『男と女』。

そこから真っ先に思い浮かんだのは「恋愛」でした。しかしながら、私はその経験値の低い人間ですので、その方向で考えるのはすぐ諦めました。
では他に何があるかしら?と考えた時、私の高校時代を思い出しました。

私の高校は元女子校の、当時共学化3年目の真新しい学校でした。「ジェンダー平等」を掲げた学舎で、「男だから…」「女だから…」という考えを改めるカリキュラムが組まれていました。
まぁ、そこまで堅苦しいものではありません。トイレの表示に色がなかったり、教師が生徒を「君、さん」付けで呼び分けるのに気を付けてたり…。制服もブレザーのみで、女子だからといってリボンやスカートをつけなくてもよかったりしました。つまりは「自分らしさ」を大切にできる場所でした。
そんな経験があったので、今回、このような作品を作るに至りました。

また、最近姉夫婦に女の子が生まれたので、そのことも、作品に取り入れました。
ホント可愛いです。

そんな私情がふんだんに盛り込まれたショートショートを読んでくださり、誠にありがとうございました。
以上、後語りでございました。

 - 男と女

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