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【たまごの物語:男と女】幼馴染とゲーム/武石 浩

      2017/06/07

【たまごの物語:男と女】幼馴染とゲーム/武石 浩

一人で据え置きのテレビゲーム機で遊ぶ男の子。彼は画面の向こうのキャラクターを動かして遊んでいる。彼が遊んでいるのは世間でも評判の高いもので、確かに楽しめていた。
ここのところはずっと一人だ。一人でゲームをする機会が圧倒的に増えた。前はそうでもなかったのに。そう、隣には幼馴染がいた。対戦したり、協力したりしてくれていた幼馴染がいた。
女の子だったが、物心つく前からの付き合いだ。母親と行った公園で出会ったのだと聞いている。性別は違えども、仲は良かった。よくありそうな「大きくなったら結婚する」という約束をするような仲の良さではなかった。一緒に走り回って、一緒にけがをするような。
彼女はすべてにおいてなかなかにこなし、だからかお姉さんぶることもあった。同い年なのに。ゲームだって対戦すればよく負けたし、協力すれば足を引っ張ってしまった。当時はそんな自分を恥ずかしく悔しく思ってしまって、彼はついつい彼女にあたってしまった。
彼女はそうすると怒った。けれど上手く流していたようにも取れた。
男の子はそれで終わるような気性ではなかった。努力した。いかにして対戦で勝ち、いかにして協力で引っ張れる存在になれるのかを、試行錯誤して練習し続けた。だから今ではクラスメートに攻略を指南するような子にもなれた。
それでも彼女に比べればやや劣るくらいだと、男の子は自覚していた。そして心の中で「やっぱり上手いなあ」と純粋に褒められるようになった。男の子のレベルが上がっても、同じように上がっていくのだからすごいものだ。
そんな風にずっと二人で出来るものだと思っていた。
ある日のことだった。いつものように誘うと彼女は断り、さらに「もう遊ばない」と言い出したのは。
意味がわからなかった。男の子は学校のテストよりも頭を回し、何かひどいことをしてしまったのではないかと考えた。まったく心当たりがなかった。それはそうだ。昨日までいつものように遊んでいたのだから。
いや、一つだけ浮かんだ。昨日のゲーム、初めて対戦で彼女に勝ち越したのだ。
接待のようなものではない。これまでになく彼女も必死な表情で操作していたのを覚えている。ぎりぎりの勝負が繰り広げられた。取っては取り返し、取っては取り返し。そうして終わってみれば勝てていたのだ。
男の子はとても嬉しかったから、ちょっと調子に乗ってしまった。それがもしかすれば彼女を傷つけたのかもしれないと、思ってしまった。でもあの時の彼女は悔しがりながらも怒ってはいなかったように覚えている。
けれどそのことしかどうしても思い浮かばなかったので、素直に謝った。だからこれからもいつも通りにゲームをしようと提案した。でもそれは届かなかった。彼女はそれから本当に来なくなった。道や学校で目が合っても、すぐに逸らされた。朝の挨拶をしてみても彼女は返してくれなかった。そういうことだから話すこともなくなった。
もう少し経てば高校生になる。これまでは同じ学区だから当然のように同じ学校に通っていたが、それももう終わる。すればもっと会わなくなる。そうしてそのまま高校で出会う人たちで上書きされ、忘れ去られることになるのだ。
ゲームはとあるエリアで引っかかってしまった。何度も試してみるが、さすがのハードモードで残機が減っていく。男の子はうーんと悩みながら、もしものことを想像した。もしも今も隣にあの娘がいれば、すぐにクリアできてしまうだろうと。そして言われるのだ。
「まだまだ下手だねー」
男の子は家を飛び出し、彼女の家へと向かった。そろそろ寒さが目立つが、薄着のままで脚を回した。すぐに玄関の前へとたどり着く。インターホンを押す。すると彼女の母親の声がした。男の子は「おばさん、あいついませんか?」と尋ねる。「ええ、いるわよ」母親は答えた。
インターホンのスピーカー越しに、母親が彼女を呼ぶ声がした。しばらく待てば現れるだろう。男の子はどういう風に説得しようか考える。面白いゲームだということを上手くアピールできれば、好き者の血が騒ぐに違いない。すぐに目を輝かせて隣で一緒に遊んでくれるのだ。
「あの……」
声がした。でもそれは彼女ではなく、母親のままだった。
「あのね、ちょっと具合が悪いみたいでね、その……」
すごく言葉を選ばれている。男の子はそこまで賢しくないわけではない。だから適当に礼を言って帰ることにした。本当に嫌われていることがよくわかった。もう二度と一緒に遊ぶことはなくなったのだ。
男の子は家に戻るとすぐにゲームを再開した。明日も学校があるけれど、それを忘れてクリアすることに全力を注いだ。起き続けたことのない時間を軽く超え、延々と画面を睨み続けた。
次の日。彼は風邪を引いて高熱を出し、学校を休んだ。
そこまでしても結局クリアすることは出来ず、汗にまみれたコントローラーを叩きつけてゲーム機を壊した。
それからしばらく、ゲームに触れることはなくなったのだ。

作者プロフィール

武石 浩
こんにちは。初めまして。武石 浩(たけいし こう)と言います。「E★エブリスタ」「小説家になろう」「ノベルジム」などで色々書いております。よろしくお願いします。

作者あとがき

「男と女」というテーマで色々考えてみた結果、こういう幼馴染のお話にしました。恋愛ものだと個人的にあまり変わり映えしないので、思春期な香りで距離が微妙に離れてしまう感じを書いてみました。
実際にこういう経験をしたことはないのですが、似たような感覚は味わったことがあります。
女の子がどうして男の子と距離を取ってしまったのか。それは色々と考えられると思っています。同級生にからかわれたからかもしれませんし、ゲームを子供のするものと感じてしまったのかもしれませんし、色々。
異性として行為を抱いてしまったからかもしれないというのは、男の願望を持ちすぎている気がしますが、それはそれでエエのかもしれませんね。
長くなってしまいました。とにかく楽しんでいただければ幸いです。

 - 男と女

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