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【たまごの物語:お金】ちえちゃんのおおみそか/紗倉凜子

      2015/01/16

【たまごの物語:お金】ちえちゃんのおおみそか/紗倉凜子

ある大晦日の日、ちえちゃんはお母さんに貰った百円玉を握りしめ、まちに繰り出しました。好きなものを買ってきていいよ、と言われたのです。

ちえちゃんはてくてく歩きます。商店街が見えてきました。歩くペースも上がります。そして、あっという間に商店街の入り口の、駄菓子屋さんに着きました。

ちえちゃんはもう、立派なお姉さんです。だから、一人で買い物だって出来るのです。誇らしげにお店の中へ入って行きました。

いつもお母さんが買ってくれる、大好きなガムを買うつもりでした。十円なのに、ずっとずっと噛んでいられて、その上当たり付きなのです。ガムのたくさん入った箱を見つけるとその中から一つ選び取り、奥のおばあさんの所へ持って行きました。おばあさんは、少し怖くて苦手です。けれど、ちえちゃんはお姉さん。今日は怖くないのです。勇気を出して、奥へ歩いて行きました。

すると、ちえちゃんと同じくらいの年頃の女の子とおばあさんが、なにやら話をしていました。

「これじゃあ、二十円足りないよ。何か、戻しておいで」

おばあさんのしゃがれた声でそう言われ、女の子は今にも泣き出しそうでした。そこで、ちえちゃんは言いました。

「わたしが二十円、あげる! 」

ちえちゃんはお姉さんなのです。お母さんはちえちゃんにお菓子を買ってくれるし、兄弟でお菓子を買いに来ている子たちはいつだって、大きい子がお金を出しています。だから、お姉さんのちえちゃんが足りないお金を出してあげようと思ったのでした。

「それと、これ、ちょうだい」

そう言ってさっき取ったガムをおばあさんに見せました。するとおばあさんは、

「はいよ。じゃあ、これ、お釣りね」

と言って、五十円玉を一枚と十円玉を二枚、ちえちゃんに渡しました。一枚が三枚になりました。ちえちゃんは嬉しくなりました。

「ありがとう!」

元気にそう言い、お店を出ました。女の子も嬉しそうでした。ちえちゃんはいい気分になりました。そして、早速ガムを噛み始めました。

ちえちゃんはずんずん歩きます。商店街の奥にある、バス停まで来ました。ここで、お店は終わりです。引き返して家に帰ろうとしたそのとき、バス停で、ちえちゃんより一回りも大きい男の子が、ちえちゃんでも見下ろせるほど小さくうずくまっているのを見つけました。

「どうしたの?」

ちえちゃんはどうやら、困っている人は見過ごせない性分なようです。声をかけました。

「あぁ……俺、隣町から来たんだけどさ。バスの運賃が、百二十円なんだよ。だけど、俺、百円しか持ってなくて……このままじゃ家に帰れないんだ。それで困っていたんだよ」

そう言われて、ちえちゃんはふと手元を見おろしました。

「五十、十、十……十が二枚で二十円?」

ぼそっとそうつぶやくと、自分の手から十円玉を二枚取り、男の子に差し出して言いました。

「はい、これどうぞ。これでおうちに帰れるでしょう?」

「ありがとう!代わりといってはなんだけど、はい、これ。飴をあげるよ」

「わぁー!ありがとう!」

ちえちゃんはとても満足な気持ちになりました。男の子がよろこんでくれて、ありがとうと言ってくれて、飴がもらえて、幸せなあたたかい気持ちに満たされたのです。

気を良くしたちえちゃんは、とっとこ走ります。おうちまで、あと少しです。そのとき、目の前にごろごろとたくさんのみかんが転がって来ました。ふとみかんが転がって来た先を見てみると、重そうな袋をかかえ、そこらじゅうにばらまかれてしまったみかんをぼうっと見つめるおばあさんの姿がありました。

ちえちゃんは、その場に男の子に貰った飴と五十円玉を置き、両手にたくさんのみかんを抱えておばあさんのもとに駆け寄りました。

「はい、おばあさん!」

おばあさんの持っていた紙袋にみかんを詰めながら、ちえちゃんは言いました。

「これ、そこまで持って行ってあげるよ!私のおうちも、ちょうど、そっちだから」

そう言ってちえちゃんとおばあさんは歩き始めました。

「ありがとう……助かるよ」

おばあさんは言いました。

ちえちゃんが、男の子に貰った飴と五十円玉を置いたところにつきました。ちえちゃんがそれらを拾い上げようとしたそのとき、バッと強い風が吹き、カラスが五十円玉を加えて飛び去って行きました。

「あっ……。私の五十円玉……」

ちえちゃんは泣き出しそうになりました。すると、おばあさんが

「なら私が五十円玉をあげるよ。いや、五十円と言わず百円やろう。ほら、どうぞ」

と言いました。ちえちゃんはすぐそこまででかかっていた涙をひっこめて、笑顔で言いました。

「ううん、大丈夫。お姉さんだから!それに、お母さんに、知らない人にお金を貰っちゃダメって言われてるし。だから、ごめんね。ありがとう」

するとおばあさんは、にっこり笑って言いました。

「そうか……いい子だね。じゃあ、みかんをあげようか。それなら、良いだろう?」

「うん!ありがとう!」

ちえちゃんは元気良く答えました。

ふと空を見上げると、空が、ほんのり赤く染まっていてとてもきれいでした。ちえちゃんは、まるで今日出会った人たちの、「ありがとう」の顔の色のようだと思いました。

作者プロフィール

たまごライター:紗倉凜子
writer_sakura_100小説家を目指すたまごライター、紗倉凜子(さくらりんこ)。現役中学生として、学校生活と両立させつつ頑張っています!今の私にしか書けないことを、より印象的に、より私らしく。@NovUrban

 

あとがき

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