小説家のたまご

未来の小説家=小説家のたまごを応援するサイトです。

*

【たまコラム:文学賞で大賞をとる】第4回:夏樹静子先生/あやまり堂

      2015/05/17

【たまコラム:文学賞で大賞をとる】第4回:夏樹静子先生/あやまり堂

このコラムでは、第22回九州さが大衆文学賞受賞にまつわるあれこれを書いております。

本日、祥伝社へ「ゲラ」を返送しました。
これで無事に6月22日(月)発売の「小説NON」7月号」に、受賞作「老虎の檻」が載せてもらえるかと思います。
さて――。
登竜門までの記録からすれば、余談ですが、贈呈式でお会いでき、たいへんおもしろかったですし、滅多にない機会だと思いますので、書いておきます。
ミステリー好きで、夏樹静子、を知らない人はあまりいないと思います。
『Wの悲劇』とか、土曜ワイド劇場とかの『女検事・霞夕子』とか、驚くほど多数の著作をお持ちです。

しばらく、心因性の激烈無比なる腰痛に苦しんだ経験があって、タクシーも、後部座席に横になって乗らなきゃいけなかったと、『椅子が怖い』という本などに書かれていましたが、今はすっかり健康、今回の贈呈式にも、博多から小一時間の道を、タクシーでお越しになったそうで、受賞パーティでも、用意された椅子に腰掛けて、普通に過ごされていました。

贈呈式で、そんな夏樹先生にお会いできると聞いたので、受賞のお知らせをいただいてから、夏樹先生の著作を――今までまったく読んだことがなかったものですから、慌てて、買い回りました。それで、一ヶ月で次の六冊を読んで、といいますか、佐賀へむかう電車の中でも読み続けて、贈呈式に臨みました。

『天使が消えて行く』(実質デビュー作)
Wの悲劇』(有名どころ)
『手のひらのメモ』(近著)
『椅子が怖い』(腰痛記)
『心療内科を訪ねて』
往ったり来たり』(最近のエッセイ)

エッセイの中で、夏樹先生は、ミステリーと現代的テーマを融合させることに苦労している、と書かれていて、つまり現代的テーマを重視すると、ミステリー(要するに殺人)の非現実感が浮いてしまうし、ミステリーを重視すると、現実的な話から乖離してしまう……というので、そこら辺の按配を、いろいろ聞き出そうと思っていましたが、贈呈式が終った後の座談会で、尋ねたところ、
「あんまり覚えてない、というとあれでございますけど、書いてる当時は、それはもちろん、考えているわけでございますが、何分昔の話ですし、あの話のこの部分、と言われると思い出せるかもしれませんが……」
と、まことにほわほわした感じのことをおっしゃるばかり。
辛うじて聞けたことも、エッセイに書かれていた内容そのままでした。

夏樹先生は、審査委員を代表して、贈呈式の中でも、一言述べられたのですが、指名された際、
「わたくし、喋るんでございますか。何も聞いておりませんで、何も用意しておりませんが」
とご発言、新聞社の方から、
「言いました!」
と言われて、辛うじて、腰低く、
「みなさんの作品、きちんと読ませていただきましたが、はい、でももう何も覚えておりませんで。ただ、全体の水準が上がっているのは間違いなくて」
とか、まことに正直なお言葉。
でもそこがお人柄だなあと、たちまち敬愛する心持になりました。

また、その正直さゆえに、かえって嬉しかったのは、新聞に掲載された「選考経過」のコメントで。
新聞紙上において、あたくしの小説文章について、
「これは要らない、という無駄な部分が無い」
というようなことを、仰っていただいたのですが、そのことを、他の方から質問された際、
「へえ。わたくしそんなこと言ったんでございますか。はあ。じゃあ、そう感じたんでしょうねえ」
とのこと。
なまじなお世辞とかじゃなく、率直に読んでくださったのだなあと、まことにうれしく思いました。

ところで小一時間の座談会の最中、5分おきくらいに、
「済みません、今、何時くらいですか。わたくし時計を持っていなくて」
と、隣のあたくしに尋ねられたのも印象的。
「わたくし、八時ごろまでには家に帰らないと。八時半に電話があるものですから」
ということを、すくなくとも二度は、聞きました。

飾らない、底意というものをお持ちにならないおばあちゃん、という印象を、失礼ながら、持ちました。
あれで骨太の、現代テーマとミステリーの融合なんていうことを成し遂げたのですから、不思議といえば、不思議です。
いずれにしても、初めて接したプロ作家が夏樹先生で、まことに喜ばしいなあと思いました。ああいう性格には、何とも、あこがれます。

それから座談会の最中、ご自宅には夏樹静子ネタ帳ともいえるものがあって、普通の大学ノート十五六冊になっている……という話が聞き出せたことは、良かったと思います。
そこに、色んなメモを書いておいて、作品中で使用したネタは、隣に作品題名を書いて、かぶらないようにしているとか。
それ以外の小説作法めいたことは、エッセイに書かれた内容以上のことは、お聞きすることはできませんでした。惜しい。
そんなこんなで。
第22回九州さが大衆文学賞受賞について、書いてまいりました。
この後は、受賞できた小説ができるまでの、あれこれメモ的なことを書き残しておきたいなあと思いますが、何か気になることとかありましたら、適当に投げてみてください。
http://ask.fm/ayamarido
匿名? の質問箱をつくってみましたので、気になったこととかありましたら、適当にどうぞー。

(つづく!)

たまコライター プロフィール

あやまり堂(あやまりどう)
tamako_001_ayamarido
長く小説新人賞一次落ち通知コレクターを続けてまいりましたが、このたび「老虎の檻」という歴史小説で、第22回九州さが大衆文学賞の大賞・笹沢左保賞をいただきました。働きながら大学院通学中。専門は日本史(キリシタン史)。twitter:@ayamarido

たまコラムとは

小説家のたまごが気になるテーマごとに、数回から十数回程度のコラムを、連載形式でお届けします。

 - 文学賞で大賞をとる , ,

ad pc

ad pc

コメントはお気軽に^^

  関連記事

【たまコラム:文学賞で大賞をとる】第3回:贈呈式/あやまり堂

【たまコラム:文学賞で大賞をとる】第3回:贈呈式/あやまり堂 九州さが大衆文学賞 …

【たまコラム:文学賞で大賞をとる】最終回:小説作法/あやまり堂

【たまコラム:文学賞で大賞をとる】最終回:小説作法/あやまり堂 九州さが大衆文学 …

【たまコラム:文学賞で大賞をとる】第1回:九州さが大衆文学賞について/あやまり堂

【たまコラム:文学賞で大賞をとる】第1回:九州さが大衆文学賞について/あやまり堂 …

【たまコラム:文学賞で大賞をとる】第2回:最終選考会/あやまり堂

【たまコラム:文学賞で大賞をとる】第2回:最終選考会/あやまり堂 「九州さが大衆 …

【たまコラム:文学賞で大賞をとる】第0回:はじめに/あやまり堂

文学賞で大賞をとる たまコラム、最初のテーマは『文学賞で大賞をとる』です。 小説 …

【たまコラム:文学賞で大賞をとる】第5回:登竜門まで/あやまり堂

【たまコラム:文学賞で大賞をとる】第5回:登竜門まで/あやまり堂 そんなわけで、 …

【たまコラム:文学賞で大賞をとる】第6回:登竜門までその2/あやまり堂

【たまコラム:文学賞で大賞をとる】第6回:登竜門までその2/あやまり堂 九州さが …