小説家のたまご

未来の小説家=小説家のたまごを応援するサイトです。

*

【たまコラム:文学賞で大賞をとる】第6回:登竜門までその2/あやまり堂

   

【たまコラム:文学賞で大賞をとる】第6回:登竜門までその2/あやまり堂

九州さが大衆文学賞の落選から受賞できた、小説作法的なことを、考えながら、書いております。

さて、いよいよ6月22日発売の、祥伝社「小説NON 7月号」に、第22回九州さが大衆文学賞受賞作「老虎の檻」と、選考経過が掲載されます。
「たまご」の皆様におかれては、あたくしの小説など、正直なところ、読んでも読まんでも良いですが、森村誠一、夏樹静子、北方謙三という3作家による選考会の様子は、是非読んでいただきたいと思います。
一流作家による、エンタメ系の、素人の小説についての小説論なんて、ほかではまず見られません。

小説NON 2015年 07 月号 [雑誌](Amazon)

意識的に書く

前回の「向上理論」について補足すると、「経験値」とでも言える横軸は、単なる時間経過じゃダメだということは、お分りいただけると思います。
ただ書けば良いというものじゃない。
要するに、自分が成長できるよう、意識的に書かなきゃいけない。
課題を意識して、どう書くかを意識しながら、書く。

これまで受賞できていないということは、何かが(あるいは全部が)その賞レベルに達していないわけで、その悪い部分はどこか。
改めるべき点はどこか。
縦軸の、作品レベルを向上させる方法や、向上したという感触を得るべく、次々に書いて、実力を涵養してまいりましょう。

ところで、そもそも小説を書く上で、新人賞を目指すべきか否か、という問題もあるかと思います。
賞なんて気にせず、好きなように書けばいいじゃん。
今は電子出版も自分でやれるし。
電子出版からデビューした人だっているぜ!

……という理屈も納得できますが、わたくし自身は、自分の実力がどのへんにあるかを、もっとも簡単に、客観的に知ることができるのが文学賞、新人賞だと思うています。
また、読者にとっても、「何とか賞受賞作品」は、その作品の質を保証してくれる意味でも、便利な指標になると思います。
そんなわけで、わたくしは、今後もさらに大きな新人賞を目指して、頑張って行かねばならんと考えております。

過去作の書き直しは……

わたくしは、過去に落選した小説を書き直して、別のところに出す――ということは、極力、避けていました。

プロを目指して行くのであれば、いくらでも新作を書く訓練を積まなければならない――という意見を、どこかで見たため、というのもありますが、前回の理屈からすれば、過去作にこだわっても、良いことはあまりありません。
次を書いていったほうが、成長が期待できます。

といいますか、何作か、未練がましく書き直して投稿した、個人的な経験からすると、落選作は、
「何もかもが悪い」
場合がほとんどだと思われます。

根本的な人物造形や、筋書きそのものの不備、不足、陳腐さ。
落選作は「そもそも」悪かったのだ、と思えば、多少書き直したところで、どうということにはなりません。

もちろん、小説修行として、自分の欠点を見つめ直すために読み返す、という方法もあると思いますので、書き直しは全然意味がない――なんてことは、思いません。
どこかで落ちた作品を、他の賞へ投稿してみごと受賞、という話も聞いたことがあります。
けど、そもそもおもしろくないものを後生大事に抱えていても、わたくしは、あんまり意味はないんじゃないかなあ……と、思うのです。

なお、誤字脱字は、多少あっても、無問題です。
実際にわたくしの「老虎の檻」には、何カ所か、誤字脱字がありましたが、受賞できました。
あと、細かな表現ミスや言い間違いも、選考には影響しないと思われます。
というのも、受賞作を出版社へお送りしたところ、要訂正、要検討のメモで真っ黒になったゲラが返ってきたからです。

いずれにしても、そんな細かなところで、選考に落ちたりはしません。
落ちるのは、もっと根本的におもしろくないから――だと、わたくしは理解してます。

課題を立てる

では、新作を書きまくるとして、作品レベルを向上させて行くには、どうしたら良いか。
これまた、人によって全然異なると思いますが、わたくしが試して、成功したかなあと思うのは、
「作品ごとに、細かく課題を立てて行くこと」
でした。

今回は、これこれの技法を試してみる、とか、次は、ヒロインの魅力が出るようにする、とか、ある程度、細分化した課題。

自分の作品というのは、だいたい色眼鏡で見ますので、書き上がり当初は名作だと思い、しばらく経って読み返すと、自意識との落差から絶望的な駄作に見えてしまう……ことが多いと思われ、案外、自分の小説は、適当な距離感で評価できない気がします。

けれど、ある程度細分化した課題であれば、それが作品中に達成できたかどうかは、自分で判定できるのじゃまいか。

わたくしの「老虎の檻」でいえば、今回の課題の第一は、「歴史小説らしさ」でした。
原史料の引用、歴史雑学を、適当なバランスで、違和感なく入れること。
それから言葉遣い、時代劇らしい題名。

言葉遣いについては、あとで編集さんからだいぶ指摘が入りましたが、ともかく、この課題については、ある程度はクリアできたという自負は、今回、持っていました。

それから、もうひとつの課題として「読者への惹きの、絶えざる強さ」といいますか、次にどうなるんだろう、という「引き」を、全ページに作り続けることを意識していました。これは、ある程度はできたと思いますが、今後も課題であり続けるとは思います。

(つづく!)

たまコライター プロフィール

あやまり堂(あやまりどう)
tamako_001_ayamarido
長く小説新人賞一次落ち通知コレクターを続けてまいりましたが、このたび「老虎の檻」という歴史小説で、第22回九州さが大衆文学賞の大賞・笹沢左保賞をいただきました。働きながら大学院通学中。専門は日本史(キリシタン史)。twitter:@ayamarido

たまコラムとは

小説家のたまごが気になるテーマごとに、数回から十数回程度のコラムを、連載形式でお届けします。

 - 文学賞で大賞をとる , , , , , ,

ad pc

ad pc

コメントはお気軽に^^

  関連記事

【たまコラム:文学賞で大賞をとる】第5回:登竜門まで/あやまり堂

【たまコラム:文学賞で大賞をとる】第5回:登竜門まで/あやまり堂 そんなわけで、 …

【たまコラム:文学賞で大賞をとる】第3回:贈呈式/あやまり堂

【たまコラム:文学賞で大賞をとる】第3回:贈呈式/あやまり堂 九州さが大衆文学賞 …

【たまコラム:文学賞で大賞をとる】第0回:はじめに/あやまり堂

文学賞で大賞をとる たまコラム、最初のテーマは『文学賞で大賞をとる』です。 小説 …

【たまコラム:文学賞で大賞をとる】第4回:夏樹静子先生/あやまり堂

【たまコラム:文学賞で大賞をとる】第4回:夏樹静子先生/あやまり堂 このコラムで …

【たまコラム:文学賞で大賞をとる】最終回:小説作法/あやまり堂

【たまコラム:文学賞で大賞をとる】最終回:小説作法/あやまり堂 九州さが大衆文学 …

【たまコラム:文学賞で大賞をとる】第2回:最終選考会/あやまり堂

【たまコラム:文学賞で大賞をとる】第2回:最終選考会/あやまり堂 「九州さが大衆 …

【たまコラム:文学賞で大賞をとる】第1回:九州さが大衆文学賞について/あやまり堂

【たまコラム:文学賞で大賞をとる】第1回:九州さが大衆文学賞について/あやまり堂 …