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【たまコラム:文学賞で大賞をとる】最終回:小説作法/あやまり堂

   

【たまコラム:文学賞で大賞をとる】最終回:小説作法/あやまり堂

九州さが大衆文学賞大賞・笹沢左保賞をいただきまして、一年が経ちます。
まだ公開されていませんが、第23回の受賞作はもう決まっているはずで、
「とうとう、俺の回は終わったか……」
などと思ったりします。

そんなこんなで、佐賀新聞社が「『九州さが大衆文学賞』作品集5」を発売しています。
私の受賞作を含め、過去5回分の受賞作と選考経過が載っており、「たまご」のみなさんにおかれては、「選考経緯」が、受賞作以上に読む価値があると思います。
この本、どういうわけか、amazon等のネット通販では買えないので、興味ありましたら、書店で訊いてみてください。
ISBN: 978-4-88298-207-4

小説作法メモ

だいぶ間があきました。
実は全10回計画の、最後の2回ほどは、受賞作が完成するまでに気づいた、具体的な小説作法のメモなどを書こうとしていました。
ところが書き出してみると、どうにも気乗りがせず、おもしろみに欠けるといいますか、胡散臭いといいますか、
「ていうか、おまえがそんな偉そうに云々できる立場じゃねえじゃん」
とか思われて、じゃあ、偉ぶった小説作法などではない、わたくしが受賞作に至るまでに試みたことを書いて、お茶を濁そうかと思い直し、「古典を勉強した」だの「放送大学で学位を取った」だの書いてみたのですが、やっぱり、おもしろくもない。

でも何か一つくらい、「たまご」のみなさんの役に立ちそうなこともあるだろうと考え込みまして、どうにか小説作法関連で2つほど思いついたので、それを書き、おしまいとさせていただきたいと思います。
わけのわからん連載におつきあいくださいまして、まことにありがとうございました。

躊躇なく躊躇すべし

小説を愉しく書いていると、途中で何か、ノリが悪くなることがあるかと思います。
何というわけではないのだけれど、ふとツイッターを見たり、スマホをいじったり、果てはゲームを開始したり、部屋の掃除をしてみたり。
わたくしは、この「何となく、ノリが悪い」「何か、先へ進みにくい」とき、実は、作者自身が、
「この小説って、思ってたより、おもしろくないんじゃね?」
と思い始めている兆候だと、捉えるようにようにしています。

小説の続きを書こうとしているのにゲームをやってしまうのは、実はその小説を書きたくないという証拠。
つまるところ、
「ゲームの方が小説よりおもしろい」
「書こうとしている小説が、そのゲームよりおもしろくない」
ということになりまして、要するに、
「書き続けようとしている小説がおもしろくないと作者が自分で知っている状態」
だと思うのです。

そんな事態に陥った時は、さっくり言えば、けっこう手前に戻って、大幅に書き直すしかないでしょう。
もちろん、心理描写がうまくいかないとか、派手なシーンが描出できずに書き悩む――といった停滞要因もあろうかと思いますが、
「うまく書けないときは、うまく書けていない」
のですから、とくに「たまご」の皆さんが足踏みしてしまった時は、
「あー、これは何か、ダメだというサインかもしれない」
と一度立ち止まり、これまでの展開を振り返るきっかけにすればいいと思います。

こういう時にはゲームの方がおもしろいのですから、ゲームをしたっていい。
気分転換は大事ですし、これまで書いてきたところを大幅に削除するには、けっこう勇気が必要です。
なので、躊躇なく躊躇して、気分を入れ替えたら思い切って、書き直す。
そういうことも重要であろうと思います。

停滞を打破する一つの作戦

そうして、躊躇なく躊躇して、悩んで、悩んだ結果、それなりの展開しか思いつかないこともあろうかと思います。
それなりに書き進んで、でもまたすぐに停滞してゲームに逃避して、あきらめて大幅に書き直して……と、行きつ戻りつしながら工夫を重ねる。
上達するにはそれが一番大事なんだと思いますが、とりあえず一つ、簡単にこうした停滞を打破する方法があります。

「視点を変える」

です。

何や、そんなんやっとるわ、と思う方も多いとは思いますが、少なくともわたくしの場合、続きを書くのが何となく躊躇される時は、展開が一本調子になっていて、描かれる物語が小さくなりがち――のことが多いです。
そんな時は、思いきってら、
「一方そのころ◯◯は――」
とやると、一気に世界が広がりますし、また別の展開も閃く、かもしれない。

何より、作者が退屈しかかっているとき、読者もまた、退屈なのですね。
だから、そこへ新たな風を吹き込む感じで、
「その時、◯◯は――」
と視点を変えることは、非常に有効だと思うのです。

勿論この視点切替え作戦は、登場人物についてだけでなく、
「この世界の魔法は、一般に――」
と、世界観の説明に使ってもいいですし、
「三年前のあの日、僕は――」
と、回想シーンを挟んでもいい。
とりあえず、作者の気分転換を、作中で行ってしまえばいいのです。そうすれば、ゲームによる気分転換をしなくても、さくさく書けます。
またこれで、物語に奥行きが出ると思いますので、いいことばかりかもしれません。

宣伝2つ

……そんなこんなで、まことに適当に書かせていただきました。

今後は、共幻文庫というところで、「共幻塾」が始まり、このあやまり堂の人が講師を担当することになる、かもしれません。
ちょっと本格的に長編に挑戦してみようか――とお考えの方がいましたら、こうした企画に参加してみるのも一案と思います。
なんといいましても、「いろいろ試してみる」が一番大事なことです。

それから、わたくしはかれこれ6-7年ほどに渡って、「てきすぽどーじん」という同人誌を作り続けていて、今度、最新の「ふすまの向こうの文学☆てきすぽどーじん9号」を発行します。
紙媒体と、電子書籍による、文学同人誌。
昨今、ネットを介した多くの同人誌企画がありますが、「てきすぽどーじん」は参加作家が発行費用を出し合って、利益を目的とせずに続ける――という、まことに古い感じの同人誌です(電子版は、Amazon Kindleの「無料配付キャンペーン」を目的に作成)。

なぜこの形式かというと……。
1)そもそも「寄せ集め」小説雑誌は、需要がない。
私の「九州さが」受賞作が掲載された「小説NON」を含め、プロ世界の小説雑誌でさえ売れない御時世です。「てきすぽどーじん」は販売どころか、一般への広範な浸透も、それほど期待してません。

2)目的は、参加作家どうしの切磋琢磨
広く読まれることをそれほど想定していないので、あくまでも主目的は、同人間で読み合い、感想を述べ合うこと――です。参加作家は自分の作に対しては、自分でお金を払いますので、下手なものは載せられない、ということで、読み甲斐があります。
……この同人誌作成の成果、とは思いませんが、「てきすぽどーじん」を継続している間に、同人作家は、私のように受賞したり、最終選考に残ったり、著名KDP作家としてamazonのサイトで取り上げられたり、別名義でプロとして活躍するようになったり……と、着実に進歩しています。

そんな最新「9号」が、2016年3月下旬に発行されます。
電子版は、主目的である無料キャンペンを実施しますので、興味ありましたら、あやまり堂のツイッターなどでご確認くださいませ。
あやまり堂も、短編を載せています。
ではでは、わけのわからん文章、たいへん失礼いたしました。
遠からず、またどこかで。

たまコライター プロフィール

あやまり堂(あやまりどう)
tamako_001_ayamarido
長く小説新人賞一次落ち通知コレクターを続けてまいりましたが、このたび「老虎の檻」という歴史小説で、第22回九州さが大衆文学賞の大賞・笹沢左保賞をいただきました。働きながら大学院通学中。専門は日本史(キリシタン史)。twitter:@ayamarido

たまコラムとは

小説家のたまごが気になるテーマごとに、数回から十数回程度のコラムを、連載形式でお届けします。

また、小説家のたまごでは常時たまコライターを募集していますので、興味のある方はお気軽にご応募ください。

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