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【たまコラム:はじめての官能表現】第2回:恥ずかしがらないで。想像力で描く/藤村綾

      2016/03/21

※本コラムでは性的表現が含まれます。15歳未満の方や、不快に感じられる方は本コラムは読み飛ばしてください。

【たまコラム:はじめての官能表現】第2回:恥ずかしがらないで。想像力で描く/藤村綾

例文:

一人暮らしのあたしの部屋に彼がやってきた。一年ちょっとつき合っているのに、初めての訪問だ。ホテル代もかさむから、あたしの家に来てよ。何度も、何度もしつこく詰め寄った。けれど、彼は頑に首を縦に振らなかった。
「どうしてなの?盗聴器とかないよ」
冗談半分、苦笑さながら口にした。本当に、遠慮することなど微塵もないのに。
彼が頭を垂れつつ、一息吸って話し始めた。目が真剣だ。
「あやちゃんを、あやちゃんの生活を知るのが怖いし、」
え?なんで?彼はそこで一旦言葉を切り、あたしを引き寄せ抱きしめながら続けた。彼の心臓の音。彼の作業服の匂い。ポケットに刺さるボールペンが頬にあたる。けれど、痛いとも思わない。彼の存在を即物的に感じる。
「知るのが怖いこともある。俺は、結婚しているから。あやちゃんの領域にどこまで踏み込んでいいのかわからないから」
え?そこなの?そんなのとんだ杞憂だよ。あたしは、顔を胸の中に埋め、小さく、本当に小さく呟いた。
「秀ちゃんさ、もう、すっかり、あたしの領域に入っているから。もう、手遅れ」
本当にそうだった。彼があたしに深入りしたく無い理由はわかっている。自分が既婚者だという現実は変えられない。家に上がったら最後。彼なりの線引きだったのだろう。
けれど、今、秀ちゃんはあたしのベッドに腰掛けている。夕刻の時間。橙色の夕焼けをバックに彼があたしの部屋をくるりと見回した。
「意外と、綺麗だね。しかし、やっぱり、本ばっかりある」
雑多に積み上げられている雑誌や、小説、などを見ながら、あやちゃんの部屋だね。と、納得の形相を向けた。瞬時、無言がおとずれた。不穏な空気の中、午後五時に流れる、(何処から流れてくるかは不明)音楽と、『プーウ』『プーウ』という昔ながらの豆腐売りのラッパの音が無言の空間を宥めてくれた。
「なに?まだ、豆腐とか売りにくるんだ。この辺り」
秀ちゃんが、ほっとした顔をし、話しだす。
「ああ、う、うん、みたい、だね……」
質問に対し、返事を返した。あやちゃん、彼の声がしたと同時、あたしの手をとり、自分の方に引き寄せた。夕方はセンチメンタルになる。秀ちゃんもそうなのかも。あたしは、そのまま、ベッドに押し倒された。腕を押さえつけられ、両の腕を頭の上に持ってゆかれた。
あたしは、まっすぐ見つめる秀ちゃんを凝視出来ない。彼の背中には夕日があたり、顔が真っ黒で輪郭しか把握出来ない。けれど、彼はあたしの顔を見ようとする。唇を塞がれた。唇が抉じ開けられ、口腔内を彼の舌がさまよっている。あたしの舌を探そうと必死に。けれど、自然に。片手でいとも簡単に、あたしのシャツを剥ぎ取り、あたしは、一気に生まれたままの姿にされた。彼も作業服を脱ぎ捨て、あたしの上にのり、優しく、首筋からキスの雨を容赦なく降らせた。ああ、やだ、みないで、やだ。何度も否定の単語を並べた。けれど、その単語を発する度に、彼の愛撫は止むことなどはなく、あたしは、組み敷かれ、あああ、ああ、いい……。彼の背中に爪を立て必死に捕まった。気を抜けば、落ちてしまう。非現実の中にいるあたし達。繋がっていることだけが、全てならば、それだけでいい。あたしは、頬を伝う涙を拭うことも忘れ、歓喜の声を上げた。淫らな声。クチュクチュと抽送を繰り返す中、彼は、肩で息をしながら、あたしに問いかけた。
「あや、ちゃん、目、目をあけて、俺を見て、ねえ、お願い……」
息が荒い。彼の熱い吐息が目をキツく綴じているあたしに落ちてくる。
目なんて、恥ずかしくって開けられない。あたしは、首を横に振り、無理、無理だよぉと、涙声で何度も否定した。
「なあ、目、あけろよ」
いつもの秀ちゃんの言葉使いではなかった。あたしは、それにも驚嘆したのだけれど、グッとくる熱いものを呑み込んで、そおっと目を開けた。
「秀ちゃん……」彼が薄暗い中、慈愛な眼であたしを見下ろしていた。あたしは、瞬きも忘れ、彼と視線を合わせた。あたしは泣いていた。目の端からたくさん、大粒の涙を流した。好き、だよ。繋がったまま、呟く。彼もまた、頷き、あたしの背中に手を回す。部屋はいつの間にか暗黒の闇に包まれ、あたし達2人は闇の中に混ざり合った。闇の中で訊こえる音は、ベッドの軋む音と、互いの熱い欲情の吐息、そして、あたしの嬌声と、鼻を啜る音だけだった。
先刻からスマホがブーブーと、机の上で震えている。相手はわかっている。
電話を気にする彼を止めるよう、あたしは、必死で彼の身体に抱きついた。
お願い。今だけは。あたしのものになって。ね、お願いだから。
なぜならあたなたは一生あたしのものには、ならないのだから……。

 

『官能表現を避けて書いてきました』という、方のtwitterを見て、ええ!と、声を上げてしまいました。やはり、官能を文字で表すことは、恥ずかしいのでしょうか?自分のセックスを公開しているみたいな感覚になるのかしら?確かに経験がないとエロ描写を書くのは難しいです。が、実は経験がない方のほうが、意外にも想像が飛躍し書けることがあるそうです。想像って自由ですからね。なので、自由に書いてみる。ちょっと、比喩を交えながら、自然にエロく。

(キスの雨を降らす)や、(暗闇の中から訊こえてくるのは、2人の荒い息づかいと、擦り合う体液の音)や、(ふと、横を見たらガラス越しに映し出されたあたしは、獣のような格好をし、妖艶な目をしてバックから突かれていた。牝の顔そのものだった)遠回しに、けれど、目に浮かんだ時に、その描写がリアルに描写されれば、いいのです。

変に、(ねっとりと、真っ赤な花びらを啜りなめ、あゆみは、獣のように乱れた欲望の声音を吐いた)などと、誇張しなくってもいい。綺麗にけれど、なおかつ、描写が目に浮かびあがるように書く。あとは、羞恥心をかなぐり捨てること。想像は利己的でも構わないのだから。

たまコライター プロフィール

藤村綾(ふじむらあや)
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元風俗嬢・風俗ライターの藤村綾です。現在はDTPオペレーターの仕事に従事しつつ、風俗媒体にてコラム・小説等を寄稿しております。ミリオン出版『俺の旅』風俗珍講座連載。愛知県在住。Twitter:@AyaIssue

たまコラムとは

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