小説家のたまご

未来の小説家=小説家のたまごを応援するサイトです。

*

【たまコラム:はじめての官能表現】第6回:男と女の別れを官能的に書く/藤村綾

   

※本コラムでは性的表現が含まれます。15歳未満の方や、不快に感じられる方は本コラムは読み飛ばしてください。

【たまコラム:はじめての官能表現】第6回:男と女の別れを官能的に書く/藤村綾

-序章小説-

 そもそもあたし達は終わっている。先のない恋愛。ただ、好きだった。普通の恋愛だと思っていたのはあたしの1人よがりで、彼は行為が終わったら平然とした顔で家族の元へ帰っていった。堪らなく苦しくなった。彼を知る度、日に日に独占したくなった。いつの間にか執拗なほど彼に執着していた。
「なあ、あまりメールしてくるなよ」
 10日ぶりにあったというのに、開口一番でいわれた台詞は意外なものだった。
「だって、メ、」
「だから、忙しいんだって。ただでさえメールや電話の嵐なのに」
 あたしの言いたかったことを遮り彼はとつとつと口にした。
(メールしてごめんなさい。けど、メールを打つなんてたった30秒じゃん)言えなかったことを飲み砕きあたしは窓の外に目をやった。後部座席に乗っている。彼の斜め45度の顔。日に焼けた仕事をしている男の顔。ふと、もう、今日で最後かも。なぜかそう思った。いつもと変わらない風景。いつもと変わらない日常。変わったのは彼の纏う空気感だ。あたしのことを疎ましく思っている空気感。一緒にいた年月が彼の変化した空気感を素早く察知した。認めたくなかった。けれど、人の心は移ろい、人の心は変わる。アメーバーのように形を変えて変わってゆく。
 ホテルに入るや否や、彼はすぐにシャワーを浴びに行った。会話らしい、会話もしてはいない。あたしは、虚しくあったけれど、彼にあっている即物的な事実だけがただ嬉しかった。虚しさよりも現実の嬉しさのほうが凌駕していた。
 馬鹿なやつだと自虐する。彼は仕方なくあたしにあっているのだ。時間がない。忙しい。を何度も繰り返し、遠回しに言葉を濁しながら伝達しているのだ。
 そこまで分かっているのに、分かってないふり。
 あたしも彼のあとでシャワーを浴び、彼が寝ているベッドに滑りこんだ。
 彼の顔を覗き込んだ。目を綴じている。
「ねぇ」
 あたしは、彼の額に唇を落とした。唇が震えている。彼に触れるのが最後かと思うと、彼の一つ一つのパーツを全部触れたかったのだ。彼の髪の毛を掻き上げ、額と額を引っ付ける。彼が、なに? 声には出さなかったけれど、怪訝そうにあたしの背中に手を回す。ぐっと力を入れたら折れちゃうんじゃないかというほどきつく抱きしめた。彼はまだあたしを好きなのだろうか。いや、惰性だ。分からない感情の中、あたしも同じよう背中に手を回す。冷房のひどく効いた部屋でも、ベッドの上は灼熱地獄だった。彼があたしを四つん這いにし後ろから突き上げてくる。何度も、何度も。子宮が旋律を帯、身体が震える。
 髪の毛を掻き上げ、横に顔をやり、彼の頬を持って唇を探す。お願い。もっと、もっとあたしを抱いて。噛み付いて。歯形を付けて。お願い。あなたに抱きしめられた烙印を消えないように残していって。お願い。あなたがあたしに出来ることは、一生消えない歯形を付けることだけ。あたしは、噛まれるたびに、虚声をあげ、身体が子宮になったんじゃないかというほど、身体全部で彼を感じ、彼を受け止めた。
「なぁ、ものすごい、歯形ついちゃった」
 彼が冷静を取り戻した目であたしの首をツツーと触った。
 あたしは、頷き、いいの、だけいい、彼の肩に頭を乗せる。
 帰りの車内は言葉がなかった。
「ついたよ」
「じゃあ」

 夏の夜空はとても生温くあたしもの身体に夜風が巻き付いた。
 泣かないと決めている。あたしはあしたから本当に1人だ。

 

官能において別れを交えて書くのはとても書きやすくもあり、書きにくい場面でもあります。あまり生々しく書けないし、かといって軽くも書けない。クライマックスだから余計に。男と女は出会いがあり、別れがある。だんだんと訪れる別れの予感。それは女のほうが敏感で良くわかります。別れが迫っているのに抱いてくれる彼のことをどうとるか。したいだけなの?まだあたしのことが好きなの?呆れているんじゃないの?あやふやな感情の中でのセックス程燃え上がり、セックス描写が書きやすくなる。
男の脳と女の脳はまるで違うからこれまた面白い。女目線で書く別れの描写と、男目線で書く別れの描写。序章小説はあくまで女性目線。不倫の結末を少し官能を入れながら、終止符を打つ感じで書いた描写。「奥さんと別れてー」とすがって泣き、半狂乱で喚きちらし、包丁を握りしめ、彼の逸物をその場で斬りつけた。は、大袈裟ですが、それほどまで愛していたことがわかります。小説なら斬りつけてもよし。笑。それを具現化しては捕まりますが。笑。
男性目線の別れの描写なら、
(ダメだ。やっぱりあうとしたくなる。でもここで自制をしないと、こいつにも悪いし、お互いの為にならない。けれど)欲望には抗えず俺は、女を抱いた。腰の曲線を撫ぜる。柔らかい身体が俺の脳内に刷り込まれてゆく。ダメだ。俺は既婚者だ。もう、終わりにしないと。ああ、こいつの本当に気持ちがいい。でも、あ、イキそうだ。
みたいな感じでもかけます。葛藤と欲望の狭間での逢瀬。なので、不倫の恋は燃え上がるのでしょうか。でも、不倫は非道徳的なことです。
官能描写に必要なのは男と女。そのスパイスが不倫であったり、彼氏、彼女持ちだったり。けれど、純で無垢な恋愛もあります。今度はそこらへんをせめますね。

たまコライター プロフィール

藤村綾(ふじむらあや)
tamako_aya_400
元風俗嬢・風俗ライターの藤村綾です。現在はDTPオペレーターの仕事に従事しつつ、風俗媒体にてコラム・小説等を寄稿しております。ミリオン出版『俺の旅』風俗珍講座連載。愛知県在住。Twitter:@AyaIssue

たまコラムとは

小説家のたまごが気になるテーマごとに、担当たまコライターが数回から十数回程度のコラムを、連載形式でお届けします。

「はじめての官能表現」のまとめ読みはこちらから。

また、小説家のたまごでは常時たまコライターを募集しています。詳細はこちらをご覧ください。

 - はじめての官能表現 ,

ad pc

ad pc

コメントはお気軽に^^

  関連記事

【たまコラム:はじめての官能表現】第3回:エロ動画や、エロビデオを見てみましょう。ふふ/藤村綾

※本コラムでは性的表現が含まれます。15歳未満の方や、不快に感じられる方は本コラ …

【たまコラム:はじめての官能表現】第5回:陵辱系を綺麗に描きましょう/藤村綾

※本コラムでは性的表現が含まれます。15歳未満の方や、不快に感じられる方は本コラ …

no image
【たまコラム:はじめての官能表現】第0回:はじめに/藤村綾

はじめての官能表現 今回スタートするコラムのテーマは『はじめての官能表現』です。 …

【たまコラム:はじめての官能表現】第4回:自分の身体の声を訊きこう。/藤村綾

※本コラムでは性的表現が含まれます。15歳未満の方や、不快に感じられる方は本コラ …

【たまコラム:はじめての官能表現】第1回:感じたことを思いのまま/藤村綾

※本コラムでは性的表現が含まれます。15歳未満の方や、不快に感じられる方は本コラ …

【たまコラム:はじめての官能表現】第2回:恥ずかしがらないで。想像力で描く/藤村綾

※本コラムでは性的表現が含まれます。15歳未満の方や、不快に感じられる方は本コラ …