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【やってしまった大失敗】非常事態発生?!/八湊真央

      2015/03/31

【やってしまった大失敗】非常事態発生?!/八湊真央

幼い頃から自分がそそっかしい、というのは分かっていたので、今回のテーマを拝見した時、「そんなことあった?」と思いめぐらすよりも、数ある失敗の内「どれにしようか」という方向で悩んだ次第です。
よって、幾つか思い当たるものはあったのですが、自分なりには強烈だった、若い頃のある出来事にすることにしました。
それは冗談のような、本当の話。
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今から十年ほど前。まだ二十代半ばだった私は、東海道線で都内の職場に通勤していました。
ご存知ではない方もいるかもしれませんが、東海道線の朝のラッシュ時は乗車率が軽く百パーセントを超えてきます。特に、横浜から終点の東京までの間は、乗り降りするのも一苦労です。
普段の私は東海道線の始発駅近くから乗車する為に、ラッシュは体験するものの、座っての通勤が可能でした。
でもその日は前日に友人の家に泊まったのもあり、途中駅からの乗車になりました。当然のことながら座ることは出来ず、満員電車の中、片手で吊革につかまり立っていました。

さて、電車が、平塚駅という駅を過ぎた頃のことです。そこで事件が起きました。
何かのはずみで、電車が急激に揺れたのです。
当然車内にいた人々も、急な揺れにバランスを崩しました。
吊革につかまっていた私も、両手でしっかりと握っていなかったこともあり、思わず吊革から手を離してしまうほどの揺れでした。

吊革から手を離してしまった私は、とっさに体制を整えようとして、近くに見えていた電車のガラス窓に左手を思い切りつきました。そして、右手で「何か」を掴んでバランスを取り…辛うじて、倒れこむことはありませんでした。
「横」ではなく「前」のガラス窓に体のバランスを持っていくことで、自分の横に居た他の乗客の身体や足に、なだれ込むことが無かったわけです。

事なきを得た、と思った私はとりあえずホッとするも…その時ふと、思いました。

左手は、目の前の窓ガラスにしっかりと掌をついている。右手は違う。
でも、右手はかなりの安定感で「何か」を掴んでいる。
一体、何を掴んで・・・
「!?」
私が右手でしっかりと掴んだ「何か」。それに目をやった時、私はかなり大量の息を飲み込みました。(いや、そんな気がしました)
何故ならそれは・・・人の「頭」だったのです!

立っている私の前の席に座っていた、五十代くらいの男性サラリーマン。
私はその方の「頭」を、いわゆる鷲掴みしていたのです。しかも彼の頭は髪の毛と肌の割合がどう考えても肌の方が多いというか・・・
・・・
まさかの出来事に、私の頭の中は混乱していました。いや、きっと私以上にそのサラリーマンは混乱していたと思います。
だって今まで五十年近く生きてきた中で、二十代の小娘に素手で頭を鷲掴みにされる機会なんて、早々ない。いや、殆どなかろうに。
どうしよう、どうすればいい!?―――そんなことを思いながら周囲を見ると、何故か両隣に立っていたサラリーマン風の人々は、私達からあからさまに顔を背ける素振りをしました。更に、微妙に彼らの肩は震えていました。うん、絶対に笑っている。

今ならば、Twitterにでも投稿されそうな光景ですが、幸い当時はまだTwitterもSNSも主流ではなかったので、「劇的瞬間に遭遇したからUPしてみた」にはならなかったわけです。

とはいえ、こういう時は誰も助けてくれません。

―――そりゃ、そうです。
朝っぱらから、二十代の小娘が中年サラリーマンの頭を素手で鷲掴みにするような出来事、誰だって関わり合いになりたくない。できれば「対岸の火事」にしたいような出来事です。
しかも、髪の毛より肌の割合が多い頭から指を乱暴に離してしまったら、ここから想像を絶する状況が更に起こる可能性だってあるわけで・・・いわゆる、非常事態発生の瞬間です。
でも当然のことながら、この非常事態を切り抜けるには自分で頑張るしかないわけで。
・・・

覚悟を決めた私は、若干彼のヘアが乱れつつあることには目を背けつつ、覚悟を決めてゆっくり、一本一本、サラリーマンの方の頭から指を離しました。一応それは、彼への最大の配慮のつもりです。
そして、

「す、すみません・・・」
「いえ・・・」

私とサラリーマンはそう一言づつ言葉を交わし、再び無言のままその場所に留まりました。

いや、本当はすぐさまその場所から動きたかったけれど、満員電車故にそう簡単に場所移動が出来なかったのです。もう、まるで罰ゲームです。

周りの好奇の目にさらされつつ、結局私もそのサラリーマンも、そのまま終点までの一時間ほど、気まずい雰囲気を醸し出したまま過ごす羽目になりました。
その間、彼は何度も私が掴んだヘアを指で直していました。
直してもそんなに変わらな・・・いえ、きっとお洒落な中年男性ね、と私は思うようにし、立ったままでも寝たふりをしていたのを、今でも強烈に覚えています。

教訓。電車のつり革はどんな時でも必ず両手で掴むこと。
あの日以来、私の中ではそれが電車内で立っている時のルール。そしてこの出来事は、自分の今までの人生の中でのかなり強烈な失敗の一つになりました。

あとがき

最後まで読んでいただきありがとうございました。
でも出来れば電車に乗ったら座りたい。それ以来そう思うようになりました・・・今では良い思い出です。

たまごライター プロフィール

たまごライター:八湊真央
writer_mao_100静岡県在住の、会社員兼一児の母兼フリーライター。ライターのお仕事ではコラムを中心に書いています。その他、中学生の頃から小説も書いています。現在、オリジナル小説を「pixiv」「小説家になろう」にて掲載中。フォロー大歓迎。二次創作サイトは「Cloud9+cafe*」。Twitter:@n_wing0224

 - やってしまった大失敗

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