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【やってしまった大失敗】『No』と言う勇気/徒川ニナ

      2015/04/03

【やってしまった大失敗】『No』と言う勇気/徒川ニナ

自分の失敗を人に打ち明けるのは誰でも気恥ずかしく、躊躇われるものだ。
かく言う私も例外ではない。
恥なんてかいてナンボ!の徒川でさえ、恥ずかしいもんは恥ずかしいのである。
だが、今回のテーマが「やってしまった大失敗」である以上、そんなわけにもいかない。
いい加減腹をくくって、自分の一番恥ずかしい所を切り売りしていこうと思う。

昔から絵を描くことが好きだった。
最初は好きな漫画のイラストを模写することから始まり、気が付けば小6で「イラスト・マンガクラブ」の部長をつとめるまでになったのだから、多分本当に好きだったんだと思う。
そして中学に上がった頃、私は「自分の画風」というものを模索し始めた。

当時一世を風靡していた、峰倉かずや先生の「最遊記」。
世のオタク女子の例にもれずちょっとやさぐれた三蔵法師の魅力にやられていた私は、峰倉先生の画風を少し真似した、自分なりの絵を描き始めた。仲の良い友達に「上手い!上手い!」と褒められ、自信はうなぎ登り。鼻は伸び放題。

そんな天狗な私は、あるコミュニティにはまりこんでいた。
静岡の市立図書館にひっそりと存在する「おしゃべりノート」。
そのひどく閉じられた世界で、私は更にその鼻をにょきにょき伸ばすことになる。

端的に言うとそのノートは名前の通り、図書館を利用する人同士のコミュニケーションの為につくられたものだ。
来館者はそこに、つらつらと自分の好きなものに対する心の叫びを書いたり、イラストを添えたりする。
そこにはイラストリクエスト、通称「イラリク」というものも存在して、見ず知らずの人に絵を描いたり、描いてもらったりすることも多々あった。

メインユーザーの年齢層は、恐らく小中高のどこかだったんだと思う。
「イラスト上手ですね!」と見知らぬ人に褒められた私はすっかり有頂天。こう言ってしまった。

「イラリク、受け付けます!!」

そこからがもう凄かった。
「あれ描いて下さい!」「これ欲しいです」の嵐。
念の為申し上げるが、誇張でも自慢でもない。もう「調子乗ってました」と言うより他無い、あの感じ。
そうこうしている間に、リクエストはどんどん積み上がっていく。
ピンのイラストから、コンビ、トリオまで。そして中には私が知らない漫画のキャラクターも……。
始めは「うほほほ」と笑っていたハナノビガールの私もこれには参った。
え? 結果どうしたかって?
まぁ、想像に難くないとは思いますが……ええ。逃げました。逃げてしまいました。

リクエストに応えきれなくなった私は、ぱったりと、きっぱりと、おしゃべりノートに書き込むことをやめてしまったのだ。
自然に図書館からも足が遠のいていたように感じるのは『怖かった』からだろう。
頂いたリクエストを無下にしてしまった後悔が、私の中に色濃く残っていたのだ。

しかし懲りない女、徒川!
今度は小説の世界でそれをやらかすことになる。

高校生時代。私ははまりにはまったジャンルの二次創作小説サイトを運営していた。
マイナージャンルであるがゆえに訪問者さんとの距離も近く、すっかり楽しくなってしまった私は「あの言葉」を口にしてしまう。

「キリリク、受け付けます!!」

「キリリク」というのは、キリ番リクエストの略である。
サイトに備え付けられたカウンター(来場者数をカウントするツール)でキリの良い数字を叩きだすことができた人のみが、管理人に小説やイラストのリクエストをすることができるという、その時代を代表するネット特有の習慣だ。

しかしその「キリのよさ」を管理人側が指定しない限り、実質「キリリク」は全くもって無秩序だ。
「10000」「20000」「30000」等文句のつけようの無いものから、「5963(ごくろーさん)」「11029(いいおにく)」まで、やりたい放題。
自然、リクエストはどんどこどんどこ溜まっていった。

そして訪れる、更新停滞期。
私の中でそのジャンルに対する熱は次第に冷めていき、ホームページの更新も日に日に少なくなっていった。
完全にフェードアウトするまで、そう時間はかからなかったと思う。
とても不義理なことだが、ネットの世界ではよく見られる光景であるということも、また事実だった。

こういった体験を経て、私の中には一つの確固たる信念が生まれた。
「安請け合いはしない!!」
本当に、これに尽きるのである。

「あなたにだから、頼みたいの」
少なからず好意を寄せて頂いている人にそう言われては、多少無理してでもそのお願いを聞こうという気になるかもしれない。
しかし、結果的に『YES』の返事の後にそのひとを裏切ることになるのならば、それ以上の不義理は存在しないのだ。

結果的に、今こうして「小説家のたまご」というサイトへ原稿を寄稿している現在、この経験はとても役に立っていると思う。
自分の使える時間、技量、そしてメンタル面のコンディションなどを含めて、依頼をきちんと果たせるか否か、見極める力がついてきたような気がするのだ。

そしてあらゆるタスクに優先順位をつけて、重要な用件からこなしていく知恵もついた。
これがいわゆる、「大人になる」ということかもしれないなぁ、とアラサーにしてようやく大人への第一歩を踏み出す徒川なのである。

できることを、一生懸命。
できないことは、引き受けない。

それもまた一つの勇気であるという結論でもって、このコラムを締めくくりたいと思う。

あとがき

今回は、「やってしまった大失敗」というテーマで書かせて頂きました。
数えきれないほどの失敗をやらかしている徒川ですが、せっかくだから何かプラスの意味ももたせたコラムにしたいなぁ、と思った結果こうなりました。
同世代の方には懐かしいワードも幾つか登場したと思います。
ありましたよねぇ、ああいう時代。本当に懐かしいです。
――今まさにそういったムーヴメントの中に居る若者達にも、どうか良い経験と教訓がありますように。
「何様だよお前」と罵られながら、ここでそっと祈りを捧げておこうと思います。

たまごライター プロフィール

たまごライター:徒川ニナ
writer_nina_1001987年生まれの静岡県民。自分の書いた文章を一人でも多くの人に読んでもらうべく活動中です。守備範囲は純文学からラノベまで浅く広く。時にエッセイも嗜みます。音として美しい日本語を日々研究中。Twitter:@adagawa_n

 - やってしまった大失敗

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