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【素敵なクリスマスの過ごし方】素敵なクリスマスとは(まがお)/山田まる

   

素敵なクリスマスとは(まがお)/山田まる

すてきなくりすます。
そんなお題を見た瞬間、まるの頭によぎったのは「何それ美味しいの?」だった。

実家にいた頃なら、クリスマスには夢があった。

そろそろ面倒くさくなってきたなあ、などとぼやきあいながらも家族でクリスマスツリーを引っ張り出し、組み立て、飾り。日中はそれぞれ友人や恋人と過ごしたりしつつも、夜になれば家族皆が集まって、母親が作るクリスマスディナーに舌鼓を打った。
未だにまるにとっての一番の御馳走は、母親が作るチキンステーキとマッシュルームのクリームスープだ。
翌日の朝にはなんだかんだサンタさんからのプレゼントがツリーの下に用意され、お互いにプレゼントを開封して笑いあう。
それが、まるにとってのクリスマスの思い出であり、幸せだった頃のクリスマスだ。

さて。
ここで社会人になってからのまるのクリスマスについてを話してみよう。
修羅場だ。
問答無用に修羅場だ。
温もりもご馳走もプレゼントも関係ない。
締め切りに尻をぶん殴られながら、年末進行という修羅場を駆け抜ける一匹の獣である。
そもそも12月25日という日取りが良くない。
基本的に世間一般の会社というものは12月の26辺りには仕事納めが行われるものなのだ。

が。

ここでまるの仕事を思いだしてみよう。
まるの仕事は、ライターである。
しかも会社勤めのライターなので、ほぼ毎月同じような運用で、同じようなタスクが降ってくることになっている。
分かりやすく言うと、月刊誌で連載をしているようなものだ。
まるは毎月決まった分量を書いて、毎月決まった日にそれがリリースされるのである。
そうした場合、急にこの仕事納め、という言葉が恐ろしくなるのがおわかりいただけるだろうか。

ひと月分の作業量、書かなければいけない原稿量に変化はないのに、締め切りだけが一週間ほど早くなるのだ。
さらに、一月の予定を考えると、ますます仕事のスケジュールは前倒しになる。
普段だってわりとカツカツで、決して余裕に溢れているとは言えないまるである。
締め切り間際は毎晩終電で帰路につき、ひんひん泣いているというのに、そこからさらに一週間ほど作業日数が削り取られるのだ。
そうなるとずばり、

クリスマスに輝くのはツリーの天辺に輝く星のオーナメントなどではなく、まるの運命を示唆する死兆星だったのだ――…(そっと手を合わせる)

というような惨状になる。
そんなわけで、社会人になってからのまるのクリスマスというのは、年末実家に帰れるかどうかがかかったマジでデンジャラスなチキチキレースのゴール間際である。
実家に向かう飛行機が飛ぶまでに、原稿を担当者にぶん投げることが出来るかどうかで、心安らかに年が越せるかどうかが決まる。

――窓の外に広がる夜景。
温かい光がともる窓辺では、家族が憩い、恋人たちが甘く愛を語り合う中――まるの職場では陰惨なる修羅場が進行する。
そして、ストレスがマッハでぶちぬけると――…人は壊れ始めるのである。

一昨年のクリスマス――…

絵師「まるさんちょっと死んで」
まる「おいどうした」
絵師「構図が迷子になった」
まる「どのシーン?」
絵師「超イチャイチャからみあいながら死ぬシーン」
まる「イチャイチャ絡み合いながら死ぬ、てすごい構図だな」
絵師「書いたの誰だよ」
まる「まるだった」
絵師「はよ」
まる「まて、それをまる一人で再現しろと?」
絵師「背景さーん」
まる「呼ぶな馬鹿!」
絵師「大丈夫背景さんにはまるさんを背中から刺す方やってもらうから」
まる「ああ画面から見切れてる人な。……つか見切れてるなら要らなくね?」
絵師「そう思うのがシロートよ」
まる「まじか」
絵師「知らん」
まる「おい」

お互い締切間際で時間に追われているのに、その後二時間ほどいかに美しく床に崩れ落ちるかの研究が始まり、まる、絵師、背景、技術、合計四人が膝を強打して蹲る惨劇が繰り広げられた。
去年のクリスマス――……
技術「うわ、まるさん超久しぶりに見た気がする」
まる「二か月半ぶりの出社です(まがお)」
絵師「わ、本当だまるさんだ生きてた」
まる「生きてた。生きてた」
背景「てか、まるさんなんでいなかったん?」
まる「……2か月半で合計25万文字以上の原稿×2を仕上げるというスーパーハードミッションに強制参加させられていた。あまりに追い込まれすぎて人間辞めざるをえなかったので、社長に交渉した結果出社しなくて良いってことになってた」
一同「生きてて良かったね」
まる「おう」
絵師「そんなまるさんに残念なお知らせがあります」
まる「なんだらほい」
絵師「冬コミに小冊子作るから今から3000文字の短編三本追k」
まる「うおううおうおあああああ!!!(雄たけび)」

そんなわけで。
今年のクリスマスこそは。
今年のクリスマスこそは。

まる「え?原稿?もう終わったよ?(優雅に紅茶などを嗜みつつ仕事納めを待つ)」

みたいな理想のクリスマスを迎えるのです。
あと四万字分ぐらいのタスク残ってるけどな!!
うっう(´;ω;`)

たまごライター プロフィール

たまごライター:山田まる
writer_maru_100南国産の文字書き。「山田まる」として趣味で書きつつ、別名義で商業ライター。ゲームシナリオ、ドラマCD、WebSSやら雑誌用SS、舞台台本までわりと何でも屋。今度「山田まる」名義で本が出る。Twitter:@maru_yamada

 - 素敵なクリスマスの過ごし方

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